MODIFY STEYR SCOUT【JASG認定】
レビュー: 金子一也 (Gunsmith BATON 店長)
JASG認定コッキングエアーガン STEYR SCOUT
去る5月中旬にPP-2000 CO2GBBを発売したばかりである台湾MODIFY社が、この7月に新製品としてリリースするコッキングエアーガン STEYR SCOUT。この気鋭の新製品が、バトンTradingからJASG認定エアースポーツガンとして発売される運びとなった。
バトンTradingが販売するJASG 認定済コッキングエアーガンとしては、MAPLE LEAF製MLC-338D-S1 流速OF、APS airsoft製BARRETT FIELDCRAFTに続く第3弾の商品となる。
言うまでもなく、本製品もJASG自主規約に基づく認定検査に合格した安全なエアースポーツガンであり、購入後三ヶ月以内は、修理工賃・パーツ代に加え、修理品の受け渡しにかかる送料までもが完全に無料という万全のサポートが約束されている。
上記のサポートを受けるためには商品添付の保証書が必須となるが、保証書さえあれば、購入後3ヶ月以上経過した場合でも有料でのサポートが受けられるので、末永く愛用出来る製品となっている。
スペック
全長 | 1,005mm |
重量 | 2,700g(本体のみ) |
銃身長 | 363mm(インナーバレル長) |
装弾数 | 6mmBB弾 32発 |
価格 | 50,800円 (税込) |
発売日 | 2021年7月初旬 |
動力源 | ボルトアクション エアコッキング |
初速 | 最高 88.6m/s 平均 88.3m/s 最低 87.9m/s ジュール 0.78J ※BATON airsoft アクリビスバイオBB弾 0.2g使用、ホップアップ適正、10発での測定、気温28度 |
名門STEYR ARMSが作り上げた理想の万能ライフル
出展:www.americanrifleman.org
スカウトライフルという聞きなれない名称は、この銃の開発にも深く関わっている偉大な人物、かつて45オートの神様と呼ばれたジェフ・クーパー氏が提唱し、1985年に体系化した「理想の万能ライフル」のコンセプトに基づいたものである。
出展:www.americanrifleman.org
ジェフ・クーパー氏は、1970年代に45口径オートマチック、即ち1911を使用した戦い方(パーソナルディフェンス)を定義した人物で、ハンドガンを両手で構えて狙い撃つという極めて常識的なテクニックも氏によって広められたというのだから、その個人による影響力の大きさには計り知れないものがある。
また、ライフルに対する造詣も極めて深く、軍人として、またハンターとしての豊富な経験から、理想の万能ライフル、即ちスカウトライフルに求められる以下の7つのパラメーターを導き出した。
1 全長が100cm未満であること
2 スリングとスコープを含む重量が3kg以下であること
3 2MOAの精度があること
4 19インチのバレルを持っていること
5 弾薬は308WIN(7.62mmNATO弾)が使えること
6 固定式のフロントサイトとゴーストリングリアサイトを備えていること
7 約10インチのアイレリーフを持つ低倍率のスコープを備えていること
これらの条件を満たすライフルを当時の環境で手に入れるには、優秀なガンスミスに特注する以外の方法が無かったそうだが、STEYR ARMS社はジェフ・クーパー氏の協力を得て10年以上にも渡る開発を進め、ついに1998年、理想の万能ライフルたるSTEYR SCOUTを完成させた。
その内容は7つのパラメーターすべてを満たすには至らなかったが、ホームディフェンスからビッグゲームハンティングまで、幅広い用途をカバーする使い勝手の良さで大ヒット商品となり、今ではルガー、サベージ、モスバーグ、豊和等といった有名銃器メーカーから、多くのスカウトライフルが発売されている。
正規ライセンス取得による完全再現
今回ご紹介するMODIFY製STEYR SCOUTは、デンマークのエアソフトメーカーであるASG社がSTEYR ARMSの正規ライセンスを取得し、MODIFY社が製造、販売する形でリリースされている。前回、前々回とレビューをお届けしたAPS airsoftのBARRETT FIELDCRAFTやNoveske Space Invaderもそうだったように、今後のトイガンは実銃メーカーの正規ライセンスを取得して製品化される形が主流になって行くものと思われる。
ではいつも通り、正規ライセンスを取得してリアルに作られた各部のディティールを、まずは銃口周りから見ていこう。
一般的なライフルのイメージからすると細身な印象のあるアウターバレルはテーパーの無いストレートタイプで、6本のフルートが設けられている。
先端部のマズルカバーを外すと14mm逆ネジのスレッドが現れるが、これは実銃にも設けられて(14mm逆ネジではないが)おり、主に狩猟用のサイレンサーを装着するようだ。
ナイロンファイバー製ストックのフォアエンド部分まで伸びた、レシーバーの先端上部に見える蛇腹状パーツを前方にスライドさせると、パチンと音を立てて小型のフロントサイトが立ち上がる。
これは、スコープが泥を被ったり破損したりといった場合でも戦いを継続するために設けられたエマージェンシーサイトで、ジェフ・クーパー氏ならではの理念が具現化された装備と言えるだろう。
尚、ブッシュを抜けたらフロントサイトが倒れていた等という状況に陥ることが無いよう、起立したフロントサイトは前述の蛇腹状パーツによってロックされる構造になっており、右側面のマイナスネジを回すことで左右の調整も可能だ。
両側面にしっかりホールドするためのバルジが設けられたフォアエンドは、一般的なライフルに比べると太くガッシリした作りになっているが、この部分にはSTEYR SCOUT独自のギミックが隠されている。
フォアエンド下面の、赤い矢印で示した部分に埋め込まれているバイポッドリリーススイッチを押し込むとフォアエンド内部のロックが解け、先端部を軸に両側面のパネルが展開して、バイポッドの役割を担うのだ。
この仕組みをSTEYR ARMSでは、INTEGRATED FOLDING BIPODと呼んでいる。
展開した左右のパネルは軸内部のラッチによって固定され、ライフル本体を支えて安定した射撃を可能としてくれる。
ベルサやハリスといった金属製バイポッドのような剛性は望むべくもないが、高倍率スコープを載せた程度の重量であれば充分実用に耐える強度があり、元通りたたんでしまえば一切嵩張ること無く持ち運べるというのは、計り知れないメリットと言えるだろう。
尚、展開した左右パネルは、少し強めに引き戻すことでラッチが解放され、収納状態に戻せる仕組みだ。
左右両側からアクセス出来るホップアジャスターとTDC modシステム
左右のパネルを展開することで露出するフォアエンド側面には、ホップアップ調整用のアジャスターが設けられているのだが、驚くべきはフォアエンドの両側から操作出来る構造になっていることだ。
基本的には右利き用にデザインされているボルトアクションライフルだが、左構えでのホップ調整時に右手でアジャスターを操作出来るというのは実に気が利いている。
尚、STEYR SCOUTには2通りのHOP調整機能が備わっている。1つは従来通りのアジャスターによる調整機能。もう一つはTDC(Top Dead Center)modと呼ばれる、レシーバー上面の赤い矢印で示した部分に見えるスクリューで行う調整機能だ。
TDC modの調整はスクリュー式なので無段階にHOP調整が可能であり、HOPアジャスターの1クリックの間に相当する微妙なHOPの強さが欲しい時などは、TDC modで調整することでより繊細なセッティングが可能になる。
ただ、マウントレール部分に調整用スクリューが埋め込まれている都合上、光学機器を搭載した場合などは六角レンチでのアクセスがし辛くなる可能性があるため、従来のHOPアジャスターによる迅速な調整機能が残されている事は、ユーザーとして非常にありがたいところだ。
TDC modの具体的な使い方としては、アジャスターでのHOP調整ではベストポジションが出せない(1クリックの間の強さが欲しい)場合に、TDCスクリューで弾道の微調整を行う流れとなる。調整用スクリューは時計回り方向に回すことでホップが強くかかるが、不用意に回しすぎると確実に弾詰まりを引き起こすため、必ず実際に弾道を見ながら、少しずつゆっくり回す必要がある。
また、TDC modとアジャスターの関係性は、両者を併用した場合、HOPを強くかけている方が優先されるため、HOPを弱める際には両者を弱くする必要があることを注意しておきたい。
フォアエンド上部のレシーバー左側面には、ASG社のロゴマークを先頭に、白いマーキングがレーザー刻印されている。
実銃にもこの部分に刻印が入っているが、製造元によって様々なパターンが存在するようで、これが正解といった具体例を見つけることが出来なかった。
尚、SCOUTという文字の右にある21Dから始まる数列は、固有のシリアルナンバーだ。
エジェクションポートの左側には、STEYR ARMSのロゴマークと社名が誇らしげに刻まれ、正規ライセンス取得製品であることを物語っている。
レシーバー後方に目を移すと、ボルトアクションライフルとしては珍しいロータリータイプのセレクタースイッチが異彩を放っている。
赤いダットが見えている位置はセーフティが解除されている状態で、このダイヤルを白いダットと、四角いボタンが露出する位置まで回すと、カチッと音がしてセレクタースイッチが固定されるとともにトリガーがロックされ、セーフティオンの状態になる。
実銃では白いダットの位置がセーフティオンで、四角いボタンが露出するところまで回すとボルトハンドルが完全にロックされ、チャンバーに弾薬が入った状態でも安全に持ち運べるモードに移行するのだが、本製品ではこの機構までは再現されていない。
レシーバー中央に設けられたセレクタースイッチは左右どちらの手でも容易に操作出来るため、安全位置から速やかな射撃体勢に入ることが出来る。
エマージェンシーサイトとして設けられた、言わば隠しフロントサイトと対になるリアサイト側にも、フリップアップタイプのゴーストリングサイトが備えられている。
こちらは単純に引き起こすだけで展開が可能だが、スコープへの配慮としてかなり低くセッティングされており、バットストックに頬付けして狙うには若干厳しいかもしれない。
あくまで緊急用としての装備なので、この前後サイトをメインに使うことは無さそうだが、実際に撃ってみればこのサイトでもしっかりターゲットを捉えることが出来るのは流石のひと言に尽きる。
この辺りにもジェフ・クーパー氏の理念が活かされているのだろう。
STEYR社ならではの成型技術が活きるナイロンファイバーストック
機関部を下から見ると、まずはストックと一体になったトリガーガードに驚かされる。
この辺りはかの有名なブルパップライフル、AUGで培った成型技術が活かされた、STEYR ARMS社ならではのデザインと言えるだろう。
そのトリガーガード前方にセットされたボックスマガジンはダミーだが、実物同様に左右からロックボタンを押さえることで取り外せる上、TDC mod調整用の六角レンチ等が収納可能となっている。
尚、ダミーマガジンを外すことで見えるレシーバー底面には、BATONのロゴと、JASG認定商品である証のシリアルナンバーが白く刻印されている。
※MODIFY製エアースポーツガンは、弊社 株式会社バトンTrading 販売・卸売の商品のみがJASG認定(JASG刻印・安全認証シール貼付)となります。並行輸入の他社流通品はJASG認定ではなく保証対象とはなりませんのでご注意ください。
エアガンとしてのマガジンは、ダミーマガジンの前方に挿入するお馴染みの形で、スモークグレーの樹脂で成型された32連マガジンが1本付属する。
このマガジンの同社製MOD24シリーズへの転用は可能だが、その逆は対応不可となっているので、MOD24シリーズのオーナーにはご注意いただきたい。
尚、バットストック下部にも予備マガジンの収納スペースが設けられており、こちらに刺さっているダミーマガジンはエアガン用マガジンをセット出来る構造になっている。
特別にマガジンポーチを用意することなく安全に予備マガジンを持ち歩けるというのは、あらゆる無駄を削ぎ落そうという徹底した理念の現れだろう。
贅沢なパーツをふんだんに投入したシリンダー周り
改めて機関部を眺めると、艶消し仕上げのレシーバーと、柔らかい形状をしたボルトエンドのセミグロス仕上げとのコントラストが造形の美しさを際立たせている。
やや大振りのコッキングノブを引き起こし、ボルトハンドルを引くと、真っ直ぐにシリンダーが下がって来るコッキングのスムーズさに驚かされる。
レシーバーから引き出されたブラックフィニッシュのスチール製シリンダーは、MODIFY社の従来製品に対して12.5%もの容量アップに加え、シリコンパッドを備えた気密性の高いサイレントシリンダーヘッドを採用。
精度に拘ったシリンダー内のパーツも、デュアルロータリーリングを備えた合金製ピストンに、エアーブレーキ機能を持つサイレントピストンヘッドを奢り、ピストンの打撃による弾道への影響を最低限に抑える工夫が凝らされている。
これらの様々な工夫から、命中精度に対するMODIFY社の真摯な開発姿勢が伝わって来るようだ。
グリップからバットストックへとスムーズに繋がる造形はエルゴノミックデザインによるもので、トリガーへのアクセスに際し、手の大きさや指の長さを問わぬ自由度の高さを実現。
尚、銃全体のエッジがすべてなだらかなラインで構成されているのは、緊急時にライフルの何処かが服に引っかかることの無いようにとの配慮によるもので、これもスカウトライフルに求められる条件のひとつに数えらるだろう。
バットプレート部分には2枚のスペーサーが挟まれており、体格に応じた長さの調整が可能だ。
また、メーカー純正オプションとして、ブラックとACU迷彩2種類のライフルストックアモポーチが用意されている。
精密射撃用に選別したBB弾を入れたり、ダミーカートで雰囲気を盛り上げたりと、楽しみ方の幅が広がる嬉しいアイテムだ。
尚、このストックには実銃同様、5 SLING MOUNTING POSITIONSという機能が備わっている。
読んで字のごとく、画像に赤丸で囲った5か所のスイベル取り付け部が設けられているのだが、スリングを使用するには画像にある専用のスリングスイベルが必要となる。
このスイベル中央から延びるT字の部分を取り付け部のスリットに挿し込み、90°回すことでスイベルがロックされるユニークな仕組みで、瞬時にスイベルの取り付け位置を変更出来る優れた装備と言えるだろう。
尚、上の画像はマガジン挿入口の前方を写したものだが、スイベル取り付け位置の後方に見える溝の部分に取り付けるアンダーレールがメーカー純正で用意されており、バーチカルグリップや金属製バイポッド等の各種アタッチメントの装着も可能となっている。
MODIFY×Gunsmith BATON共同開発による高水準の命中精度
MODIFY社は2015年に初めてコッキングエアガンのMOD24スナイパーライフルを発売しているが、Gunsmith BATONではこの当時からMODIFY社にエアガン開発のノウハウを提供しているため、今作にも弊社のDNAが組み込まれていると言っても過言では無いだろう。
今回のレビューに使用した製品はサンプルであるため、間もなく入荷する製品版はさらにグレードアップされる予定だが、弊社30mロングレンジでのスコープを載せた実射テストを行ったところ、現段階で既に充分な弾道安定性と命中精度を見せつけているので、この点における心配はまったくの無用だろう。
エアガンとしてはおそらく初の製品化となる、スカウトライフルというまだ新しいカテゴリーの銃、MODIFY STEYR SCOUT。
MODIFY社の高い加工製造技術に、Gunsmith BATONの持つ豊富なノウハウが加わった魅力的な製品に仕上がるのは間違いない。
一早く入手したい貴方には、Gunsmith BATONネットショップでの出来るだけ早いご予約をお勧めする。
●製品ページはこちら
[ MODIFY ]STEYR SCOUT【JASG認定】
■関連リンク