MAPLE LEAF MLC-338 流速OF スナイパーライフル
レビュー: 金子一也 (Gunsmith BATON 店長)
JASG 認定エアースポーツガン MAPLE LEAF MLC-338流速OF
ガスガンや電動ガンはもちろんコッキングエアーガンまで、幅広い機種に対応するカスタムパーツを多数リリースしている台湾のカスタムパーツメーカー、MAPLE LEAF社が、自社製のオリジナルパーツだけで構成したコンプリートカスタム、MLC 338 Sniper Rifleを発売した。
商品名に含まれた「338」という数字と、スタイリッシュなストックの形状から見て、338ラプアマグナム弾を使用する McMillan Firearms社製のスナイパーライフル、 TAC 338をモチーフとした製品であるのは間違いないだろう。
MLC 338 Sniper Rifleは、東京マルイの傑作エアーコッキングライフル、VSRシリーズ対応のカスタムパーツを組み合わせた製品であり、その素性の良さは言うまでも無く折り紙つき。
ボルトアクションタイプのコッキングエアーガンに望みうるすべてのカスタマイズが凝縮された、贅沢な1挺と言えるだろう。
しかしながら、元々は初速150m/s(0.2g弾使用時)というパワーを前提に設計されている製品だけに、スプリングを弱くしただけのデチューン状態では、スナイパーライフルとして充分な性能が望めないのは言うまでもない。
今回レビューするMLC-338流速OFは、日本仕様にデチューンされたメーカー純正品にGunsmith BATONが独自の改良を施した製品で、JASG自主規約に基づく認定検査に合格した安心なエアースポーツガンとなっている。流速ルーズバレル 6.10 OF-Jを採用した日本仕様
では以下に、MLC-338流速OFの細部をご紹介しよう。
先端部まで太く造られた迫力ある「アルミニウムヘビーアウターバレル」は、一見するとGスペックと同じように思えるが、その実、430mmのフルサイズとなっている。
メーカーでは「ヘビー」と謳ってはいるが、単体重量はわずか500グラムで、軽さと剛性の高さを両立した優秀なアウターバレルだ。
銃口部分のアウターバレルキャップはねじ込み式の別体パーツで、インナーバレル先端をしっかりホールドしている。
銃口の奥ににちらりと見えるのは、Gunsmith BATONでのテストによって採用を決定した BATON airsoft オリジナル製品、流速ルーズバレル 6.10 OF-J エアーコッキングライフル用430mmのバレルスリーブ先端部分である。
元々使われていた内径6.02mmのインナーバレルでは、射出されるBB弾のホップ回転をスポイルしてしまうため、遠距離での集弾性が損なわれてしまうのだ。
これは設計段階で想定されたパワーの違いによるもので、バレルの精度云々の問題ではない。
日本の法定初速を遵守しつつBB弾を効率良く飛ばすためには、日本独自のノウハウが必要であるという話しだ。
使い勝手に優れたオリジナルストック
強化ポリマー製の「MLC S1 ライフルストック」 は、上述した実銃の TAC338に採用されているMcMillan A5ストックに倣ったデザインとなっている。
フォアエンド部分は画像のように幅広く造られており、アウターバレルをしっかり支えるとともに、立射時の握りやすさも実現している。
フォアエンドの両側面には、ハニカムパターンのモールドが入ったラバーパネルが取り付けられており、高い滑り止め効果を発揮している。
パネル前方のQDベースが両側面に埋め込まれているのは、上述のMcMillan A5ストックを踏襲したものだろう。
アウターバレル半ばあたりの左側には、クロームメッキされたホップアップ調整レバーが控えめに顔をのぞかせている。
実際に動かすと小刻みなクリックストップがしっかりと効いており、細かいホップ調整が可能。
そのレバーの下に内蔵されているホップアップチャンバーはアルミダイキャスト製で、同じくアルミ削り出しの長掛けアジャストレバーによる最適なプレッシャーをホップパッキンに与えられる構造だ。
尚、元々採用されていたMAPLE LEAFE純正ホップアップパッキンは流速ルーズバレル6.10 OF-Jとの相性に問題があったため、MODIFY製X-Rangeホップアップパッキンに交換されている。
フォアエンド先端の下面には、ハリスタイプのバイポッドスタッドを装備。
また、その後方(トリガー側)に並んだうっすら見える長楕円の筋は、ポンチ等で撃ち抜くとM-LOKのスロットになるという、驚きの工夫がなされている。
サバゲーでの運用なら、バーチカルグリップを取り付けるのも有りだろう。
マガジン挿入口の位置もVSRと共通だが、マガジンリリースボタンの周囲が一段低くなっているのと、ボタン表面に滑り止めモールドが刻まれていることで、抜群の操作性を実現。
また、マガジン底面の中央部分が大きく絞られており、グローブを着けたままでのマガジンチェンジも容易となっている。
そのマガジンもVSRとの完全互換で、装弾数は30発。
MAPLE LEAF社には是非、このマガジン単体で販売してもらいたいところだ。
CNC加工パーツをふんだんに投入した機関部
デザイン性の高い面取り加工が施された「CNCフルボディレシーバー」は、その名の通りアルミ合金からCNC加工によって削り出されたもので、軽さと精度の高さを見事に両立させている。
4本のボルトでがっちりと固定された20mmレールマウントもCNCによる加工品で、スコープ等の光学機器が搭載可能だ。
そのレールマウントの前後には、画像のように簡易的なフロントサイトポストとリアサイトノッチが設けられている。
頬付けして狙うには少々厳しい高さだが、緊急時のバックアップサイトとして使える局面があるかもしれない。
延長されたハンドル部分の造形が印象的な「フルスチールエンラージボルトハンドル」は、角張ったハンドル基部がスチール製となっており、抜群の耐久性を実現。
大きく延長されたハンドル部分は、ツイスト状の溝が掌にしっかり食いつき、確実なコッキング動作を助けてくれる。
また、画像の通りボルトハンドルの引き起こし角度が浅いため、素早い連射も可能となっている。
コッキングハンドルの付け根部分にあるレバーは、マニュアルセーフティになっている。
Fが激発可能、Sが安全位置というお馴染みの操作方法だが、セーフティレバーがスチール製で、折れる心配が不要というのは実に有り難いポイントだ。
ボルトのコッキングストロークはおよそ97mmと標準的だが、精度の高いCNCレシーバーとカスタムシリンダーの組み合わせにより、その動きは極めてスムーズ。
凝った面取りが美しいボルトエンドキャップも、ボルトを押し込みやすい長さとなっている。
ボルトリリース機構を搭載
レシーバー左側面に設けられた小さなレバーはローディング(コッキング)インジケーターで、ボルトを引いてコッキングすると外側に軽く飛び出して、状態がわかる仕組みになっている。
一般的なボルトアクションタイプのエアーガンは、コッキングされているかどうかを外観から判別出来ない物が多いため、これもまた嬉しい機能と言えるだろう。
さらに驚かされるのは、このレバーがボルトリリースレバーとしての機能も兼ね備えていることだろう。
リリースレバーを押し込むとセットピンが自重で落ちる(外れる)仕組みになっており、後はボルトを引くだけでシリンダー(ボルトアッセンブリー)をするりと抜き取れるのだ。
この機構を実現するため、シリンダーにはご覧のように2本のスリットが設けられている。
VSRに限って言えば、シリンダーを抜き出すためにはレシーバーをストックから取り出していたわけで、この機構を実現したMAPLE LEAFE社の技術陣には敬服するばかりである。
新設計の「ゼロ距離」トリガーボックス
スクエアタイプのトリガーガードは幅の広い樹脂製で、後ろ側の六角ネジでストックに固定されている。
オーソドックスなカーブを描くトリガーの付け根からちらりと赤く見えるのは、MAPLE LEAFE最新のトリガーボックスだ。
赤いアルマイト仕上げのケースが印象的なスチールシアートリガーボックスは、「ゼロ ディスタンスバージョン」と呼ばれるもので、ローラーベアリングシアーの採用により、従来とはひと味違うスムーズな感触のトリガープルを実現。
また、トリガーボックス前後のイモネジを回すことで、トリガーの重さとストロークを好みに合わせて調整することが可能な本格仕様となっている。
あらゆる調整が可能なバットストック
ストックのピストルグリップ部分は、表面に滑り止めのテクスチャーが施されており、あらゆる射撃姿勢において充分な効果を発揮する。
グリップの角度と形状も絶妙な設定で、手の大きさを選ばない自由度の高さを実現している。
バットストック右側に設けられたノブを緩めることでチークライザーのロックが解け、最大30mm程度の高さ調節が可能。
さらに、チークライザーを外して支柱のネジを緩めることで、左右方向への移動も出来るという徹底ぶりだ。
ストック中央のQDベースは、フォアエンド同様左右両側に設けられており、利き手を問わないスリングの運用を可能としている。
中央上部にMAPLE LEAFE(楓の葉)のエンブレムが入ったリコイルパッドは硬質ゴム製で、表面のリブが高い滑り止め効果を発揮してくれる。
また、パッド中央の上下に見える4mmのボルトを緩めることで、2枚のラバースペーサーが取り出せる。
これは、バットストックとリコイルパッドの間に挟むスペーサーの枚数によってストックの長さを調節する仕組みで、スナイパーライフルには必須の装備と言えるだろう。
バットストック下部のキャップを前方にスライドさせると、ストックと一体成型の短い20mmレールマウントが現れる。
これはプローンでの射撃時にバットストックを支えるモノポッドを取り付けるためのマウントで、精密狙撃銃には欠かせない装備のひとつだ。
コンプリートカスタムの名に恥じない実射性能
Gunsmith BATON併設のBATON Range内30mロングレンジで実射性能を検証した結果、BATON airsoft アクリビス バイオ0.28g BB弾で10発撃った際のグルーピングを3回計測したところ、その平均値が 190mm(最も離れた 2 発間の距離)という好記録をマーク。
また、50mから30cmプレートに20発を撃ち込むテストでは、およそ50パーセントの的中率を叩き出して見せた。
※いずれもレストを使っての結果
真意での流速チューンにはなっていないにも関わらず、重量弾でこれだけの集弾性が得られたのは、MAPLE LEAFEとBATON airsoft両社のカスタムパーツの優秀さを物語る事実と考えて良いだろう。
尚、マガジンを抜いた状態のハウジング内部を覗くと、MAPLE LEAFEのマークと並んで、JASG認定エアースポーツガンの証であるシリアルナンバーが刻印されている。
商品に同梱される、このナンバーが記載された保証書があれば、購入後三ヶ月以内は、修理工賃・パーツ代に加え、修理品の受け渡しにかかる送料までもが完全に無料という、Gunsmith BATONによる万全のサポートが受けられるので、安心して精密射撃の醍醐味を楽しんでいただきたい。
※購入後3ヶ月以上経過した場合でも、有料でのサポートが受けられる。
今後はこうしたCO2GBB以外のエアーガンも積極的に開発、販売して行くそうだ。
JASGに正式加盟したことで、益々その勢いを増した感のあるGunsmith BATONが、来る2021年にどんな製品をリリースするのかを、引き続き注目して行こう。スペック
全長 | 1,040mm |
重量 | 2,760g |
銃身長 | 428mm ※インナーバレル長 |
装弾数 | 6mmBB弾 30発 |
定価 | 67,840円 (税別) |
発売日 | 2020年12月 |
初速 | 最高 89.18m/s 平均 89.05m/s 最低 88.92m/s ジュール 0.793J ※BATON airsoft アクリビスバイオBB弾 0.2g使用、ホップアップ適正、10発での測定、気温20度、ACETECH AC5000弾速計にて測定 |
製品ページはこちら
[ MAPLE LEAF ] MLC-338D 流速OF 【JASG認定】
https://www.gunsmithbaton.com/products/detail/3276
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