King Arms ガスガン TWS 9mm GBB
レビュー: 金子一也 (Gunsmith BATON 店長)
JASG認定ブローバックガスガン King Arms TWS 9mm GBB
第二次大戦時の軍用銃から最新フォーマットのカスタムARまで、幅広い商品展開でマニアの人気を獲得している台湾のエアガンメーカー、King Arms社が発売した、実銃業界で話題になっているPCC(ピストルキャリバーカービン)のブローバックガスガン、TWS 9mm GBB。
この魅力あふれる製品が、バトンTradingによって日本仕様に改良され、JASG認定エアースポーツガンとして発売される運びとなった。
代替フロンガスを使用する長物ブローバックガスガンの発売はバトンTrading初となるが、本製品もJASG自主規約に基づく認定検査に合格した安全安心なエアースポーツガンであり、購入後三ヶ月以内は、修理工賃・パーツ代に加え、修理品の受け渡しにかかる送料までもが完全に無料という万全のサポートが受けられる。
※サポートには商品添付の保証書が必須。購入後3ヶ月以上経過した場合でも、有料でのサポートを受けることが可能。
PCC(ピストルキャリバーカービン)というカテゴリー
日本のトイガンユーザーにとってはあまり耳慣れないPCCというカテゴリー名だが、その概念自体は古くから存在しており、1980年代にアメリカ合衆国エネルギー省(United States Department of Energy / DOE)が採用したCOLT633にそのルーツを求めることが出来る。
原子炉施設の防衛に当たって貫通力の高い5.56mm弾を撃ちまくるのは具合が悪いため、ストレートブローバックの9mmパラベラム弾仕様とした上で、狭所戦闘向けに全長を短縮したという特異なスタイルはまさにPCCそのもので、当時最新のMP5を凌ぐ性能の高さを発揮したそうだ。
後の1989年に起きたパナマ侵攻において、COLT633に若干の仕様変更を加えたCOLT635が投入されていたことから、パナマカービンという呼称が生まれたのは、熱心なガンマニアならご存じのことだろう。
出展 https://firearmcentral.fandom.com/wiki/Colt_9mm_SMG_DOE
出展 https://jevtonline.org/
時は流れて2000年代、拳銃弾を使用するショートバレルライフルはPCCと呼ばれるようになり、プリンキングやホームディフェンス用として絶大な支持を獲得。大小様々なメーカーが多くのPCCをこぞって発売し、今ではアメリカの銃器業界で最も人気のあるジャンルにまで成長している。
出展 https://www.pewpewtactical.com/best-pistol-caliber-ar-15-carbines/
拳銃弾を使用するPCCのメリットは、異なるガンを運用するに当たって同じ弾薬が使えるという点が最も大きいと言える。
増してマガジンまで共用出来るとなれば余分な出費も抑えられるわけで、爆発的な人気を博しているのも頷けるというものだ。
その人気の高まりに呼応し、米国最大の射撃協会であるUSPSA(The United States Practical Shooting Association)が、2016年6月に自らの主催するシューティングマッチにPCC部門を設立。
ホルスターからのドロウがあるハンドガン競技に比べれば遥かに始めやすいPCC部門はたちまち大人気となり、参加者数はこの数年で爆発的に増加している。
今日も多くのシューターが全米各地でスコアを競い合っていることだろう。
出展 https://www.nagataichiro.com/
そんな状況の中、去る2021年6月に米アラバマ州で開催された世界最大のスピードシューティング競技、USPSA STEEL CHALLENGEにて、かのイチロー永田氏のご子息であるケンシロウ君がPCCO(ピストルキャリバーカービンオープン)クラスの世界記録を更新し、初参加にして世界の頂点に立つという信じがたい快挙を成し遂げた。
上の動画を見れば、この結果が単なる幸運でも偶然でもなく、紛れもない実力によってもぎ取られたという事実がわかるはずだ。
詳しくは彼の父にして専属コーチであるイチロー永田氏のブログをご覧いただきたいが、この偉業を持ってPCC部門の人気はますます高まって行くことだろう。
スペック
全長 | 600mm ~ 684mm / 690mm ~ 772mm |
重量 | 2,080g / 2,111g(本体のみ) |
銃身長 | 153mm (インナーバレル長) |
装弾数 | 6mmBB弾 33発 |
価格 | 79,800 円(税別) / 81,800 円(税別) |
発売日 | 2021年7月中旬 |
動力源 | ガスブローバック |
初速 | 最高 87.3m/s / 87.6m/s 平均 86.4m/s / 86.7m/s 最低 85.6m/s / 87.2m/s ジュール 0.746J / 0.76J ※BATON airsoft アクリビスバイオBB弾 0.2g使用、ホップアップ適正、10発での測定、気温28度 |
今回レビューをお届けするTWS 9mm GBBは、早くからTWS(TRAINING WEAPON SYSTEM)というシリーズの電動ガンを展開して来たKing Arms社のブローバックガスガンに、Gunsmith BATON技術陣がおよそ半年に渡って研究、改良を加えることで完成した、日本仕様の別注生産品である。
ハンドガードの長さが異なるSBRとCARBINの2機種にそれぞれブラックとダークアースの2色が用意された外装はフルメタル製だが、上記スペックの通り単体重量はおよそ2kgという軽さで、自在に振り回せる扱いやすさを備えた製品となっている。
ズバリそのものの実銃が存在しないオリジナル製品だけにメーカーのデザインセンスが問われるその外観を、今回も銃口周りから見ていこう。
ハンドガードから突き出した、六角形の断面を持つスチール製のフラッシュハイダーは、Black Rain Ordnance社のHex Competition Compensator 223を再現したもので、当Airsoft通信の第28回でレポートした同社製電動ガン、BLACK RAIN ORDNANCEと同一のハイダーと思われる。
一般的なハイダーのような固定用のイモネジは設けられておらず、くるくると回して外せば14mm逆ネジのスレッドが現れ、各種マズルアダプターの装着が可能となる。
ハンドガードの内径が35mm弱なので、外径34mm程度までのサイレンサーやトレーサーであれば、スマートに装着することが出来るだろう。
フロントサイトは、狙いやすさに定評のあるTROY社のFolding Battle iron sightsのレプリカが搭載されている。
上はCARBINEとSBRのハンドガードを並べた合成画像だが、こうしてみると実機の印象ほどサイズ感が違わないのが面白い。
CARBINEは約10インチ、SBRは約6インチのサイズとなっており、付け根部分両側面のマークが物語る通り、左右と下面にM-LOKスロットと、上面の20mmレールマウントを備えたCNC加工のアルミ製ハンドガードとなっている。
スタイリッシュなデザインと高い機能性を併せ持つレシーバー周り
マガジンハウジングのオリジナル刻印が映えるレシーバー左側面に目を移すと、グリップとほぼ平行になるほど斜めに刺さったグロックマガジンが印象的だが、グロックシリーズ(ハンドガン)のグリップアングルを思い出せば、この角度にも納得が行くというものだろう。
レシーバーの全長そのものは5.56mmのものと変わらないところを、間延びした印象を与えることなくスッキリとまとめているのは、デザインの妙と言えるだろう。
マガジンハウジングに入った円形のマークを良く見ると、TRAINING WEAPON SYSTEMの頭文字であるT、W、Sの3文字をシンボライズしていることがわかってなかなかに興味深い。
CAL.9mmの刻印下にあるアルファベットと数字は、固有のシリアルナンバーになっている。
画像右上に見えるボルトリリースレバー(ピンポンパドル)はもちろん別パーツで、実銃同様の機能を担っている。
見慣れた形状のセレクターレバーだが、そのポジション表記は拳銃弾をイメージしたピクトグラムになっている。フルオートポジションのマークが弾薬に∞というのは楽しい演出だ。
尚、トリガーメカニズムが実銃に準じているため、ハンマーが倒れている状態ではセレクターレバーをセーフポジションに合わせられないことを覚えておきたい。
グリップはオーソドックスなA2タイプが採用されており、ガスブローバックならではの「薄さ」が存分に味わえる。
尚、グリップは実物サイズとなっているので、好みのセッティングを自由に楽しめるのが嬉しいところだ。
※グリップの取り外しには4mmのロングタイプの六角棒レンチが必要です。
ゴールドフィニッシュのボルトキャリアがひときわ目を引くレシーバー右側面を見ると、アッパーレシーバーはいわゆるM4用そのものであることがわかるだろう。
ストローク自体はエジェクションポートの半分程度までに抑えられているが、このボルトキャリアは日本向けにCNC加工で作られたアルミ製の特別仕様で、圧力の低い代替フロンガスでの快調な作動に大きく貢献している。
グロックマガジンを使用するため、マガジンリリースレバーの構造が一般的なARと大きく異なるマガジンハウジング周りのデザインは、Double Diamond Law Enforcement Supply (DDLES)というアクセサリーメーカーによってデザインされた(現在はQuarter Circle 10というブランドで販売)9mm用ロアーレシーバーがモチーフとなっている。
出展 http://trgriq.com/pcc-custom-9mm-ar-carbine/5/
数多あるPCC、それもグロックマガジンを使用する製品の中から決してメジャーでは無いものの、カッコ良さでは群を抜いているこのロアーレシーバーをよくぞ見つけてくれたものだと、King Armsデザイン陣には心からの賛辞を送りたい。
そのマガジンハウジングに収められる付属のマガジンはグロック互換のロングタイプで、装弾数は33発となっている。
一般的なグロック用の代替フロンガスマガジンであれば、マルイ、WE、VFC、ARMYといった他社製品でも使用出来るが、マガジンスプリングの強さの違いでボルトキャッチが利かない場合があるので注意が必要だ。
エッジが適度に丸められたレシーバーと一体成型のトリガーガードは充分な広さで、あらゆる環境での高い操作性を確保。
トリガー付け根部分を下から見ると、BATONのロゴと、JASG認定商品である証のシリアルナンバーのレーザー刻印が確認出来る。
※King Arms製エアースポーツガンは、弊社 株式会社バトンTrading 販売・卸売の商品のみがJASG認定(JASG刻印・安全認証シール貼付)となります。並行輸入の他社流通品はJASG認定ではなく保証対象とはなりませんのでご注意ください。
当然のことながら、レシーバーは画像のようにテイクダウン出来る構造で、ボルトキャリアやチャンバー、トリガーメカニズムへの容易なアクセスを可能としている。
このトリガーメカニズムに関しても、低圧の代替フロンガスで動かすため、スプリングの種類や強さをあらゆる環境と組み合わせで徹底検証し、日本仕様としてのベストセッティングが導き出されているのだ。
尚、ボルトキャリアとハンマーのように、金属同士が擦れ合う部分には定期的な注油が必要だが、エアガン用に広く販売されているシリコンスプレーでは効果が得られないので、金属用のオイルを用意していただきたい。
アッパーレシーバーの20mmトップレール後端には、フロント側と同じTROY社のFolding Battle iron sightsのレプリカを搭載している。
見るからに軽快そうなバットストックは6ポジションの調整が可能で、上面後方にスリングループと、後方左右にQDスイベルマウントを備えている。
伸縮用ロックレバーの前方に見慣れないレバーが設けられているが、これはかのWILSON COMBAT社が開発、販売しているThe Rogers Super-Stocのカムロックレバーを模したものだ。
出展 https://shopwilsoncombat.com/Buttstock-Super-Stoc-Carbine-Black/productinfo/TR-SUPERSTOC/
好みのポジションでこのカムロックレバーを持ち上げると、ストックがバッファーチューブを締め付ける形で固定され、一切のガタつきを抑えるという非常に優れたシステムだ。
実物ではこのシステムにより、民間用とミルスペック両方のバッファーチューブに対応するというのだから恐れ入る。
それでいて、伸縮用ロックレバーを握ればカムロックレバーが瞬時に解除されるというのも実に気持ちが良い。
本製品でもその仕組みはきちんと再現されており、カムロックレバーを上げることでストックがビクとも動かなくなる様には驚かされた。
目立たない部分だが、このストックは間違いなくTWS9mmGBBの大きな魅力のひとつと言えるだろう。
本製品のホップ調整を行うには、まずハンドガードを取り外す必要がある。
ハンドガード付け根部分の外周に見える4本の六角ボルトを外すことでバレルナットとの結合が解け、ハンドガードを前方に引き抜くことが出来る。
現れたバレルナットの先端下部を覗くと、ご覧のようにホップ調整ダイヤルが顔を出しているので、これを回すことでホップのかかり具合を調整する。
銃口を上に見て、右に回すとホップが強くかかり、左に回すとホップのかかりが弱くなる。
尚、ホップを強くかけすぎると、弾詰まりによるトラブルを引き起こす可能性があるため、ホップ調整は実際に弾道を見ながら行うのが賢明だろう。
ハンドガンマガジンの潜在能力を引き出すベストセッティング
ハンドガン互換の代替フロンガスマガジンを使う長物ガスガンに、いったいどの程度の実射性能が得られるものかと不安を抱く向きもあると思うが、およそ半年に渡ったGunsmith BATONチューナー陣とKing Armsの共同開発により、製品版では近距離から遠距離まで充分な弾道安定性と命中精度を実現している。
上の動画は、ようやくまともに動くようになった初期サンプルで撮影した2021年2月時点のものだが、この時点で0.28gBB弾の弾道が30mターゲットの手前で大きくホップするほどの潜在能力を見せつけている。
当然ながら製品版ではより安定性を高めているので、サバゲに投入した際にロングレンジで撃ち負けるようなことは無いはずだ。
また、近距離での速射といった局面でも、銃本体の軽さとブローバックガスガンならではのレスポンスの良さで、充分すぎる戦闘力を発揮するだろう。
シューティングマッチに使用するならば、マガジンを外部ソース仕様にすることで下の動画のようなスピード競技での強力な相棒となってくれるに違いない。
※動画は TWS 9mm GBB 日本版プロトタイプでの撮影です。
Gunsmith BATONとKing Armsが持てる技術を惜しみなく注いで完成させた、代替フロン仕様の長物ブローバックガスガン、TWS 9mm GBB。
ガスガンが最も元気に動作する7月のリリースは、この製品を手にしたユーザーの皆様を大いに楽しませてくれるに違いないだろう。
この夏、最も熱くなりそうなこの新製品の魅力に、是非多くの方に触れていただきたいところだ。
●製品ページはこちら
King Arms TWS 9mm GBB
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