BH-USP Tactical CO2GBB 【JASG認定】
レビュー: 金子一也 (Gunsmith BATON 店長)
JASG認定 CO2ガスガン、BH-USP Tactical CO2GBB
ハイパー道楽読者諸氏ならお馴染みであろう、BATON's blogによる2020年10月の第一報からおよそ10か月。多くのマニアが待ち望んだBATON airsoftの新製品、BH-USP Tactical CO2GBBが、JASG認定エアースポーツガンとしてこの夏ついに発売される運びとなった。
本製品もこれまでのCO2GBBシリーズ同様、JASG自主規約に基づく認定検査に合格した安全なエアースポーツガンであり、購入後三ヶ月以内は、修理工賃・パーツ代に加え、修理品の受け渡しにかかる送料までもが完全に無料という万全のサポートが用意されている。
※サポートには商品添付の保証書が必須となり、購入後3ヶ月以上経過した場合でも、有料でのサポートを受けることが可能だ。
スペック
全長 | 213mm |
重量 | 620g(本体のみ) |
銃身長 | 109mm (インナーバレル長) |
装弾数 | 6mmBB弾 26+1発 |
価格 | 23,980円(税別) (税込) |
発売日 | 2021年8月中旬予定 |
動力源 | CO2カートリッジ式ガス |
初速 | 最高:75.31m/s 平均:74.12m/s 最低:72.93m/s ジュール:0.679J ※BATON airsoft アクリビスバイオBB弾 0.2g使用、ホップアップ適正、10発での測定、気温28度、[ ACETECH ] AC5000 弾速計にて測定 |
ポリマーフレームオートの老舗が作った万能自動拳銃
出典:www.topgunsupply.com
USPは、ドイツに拠点を置く言わずと知れた世界的銃器メーカー、Heckler & Koch GmbH(H&K)社が開発、販売している、9mm×19、40S&W、45ACPという3種類の弾薬に対応可能なポリマーフレームオートで、その名称はUniversal Self-loading Pistol(万能自動装填式拳銃)の略称である。
H&K社は1970年発売のVP70(世界初のポリマーフレームオート)を皮切りに、50年以上の長きに渡って樹脂成型の研究を重ねており、その豊富なノウハウによって優れた製品を作り続けている一流メーカーだ。
1989年の開発スタートから1993年の完成まで、わずか4年余という早さで創り上げられたUSPだが、その間にUSSOCOM(アメリカ特殊作戦群)の要求によるOHWS (Offensive Handgun Weapon System program) への参加を経た改良が加えられており、軍、法執行機関向けハンドガンとしての完成度の高さは折り紙付きと言えるだろう。
事実、ドイツ連邦軍を始め、我が日本警察のSAT(特殊急襲部隊)や、陸上自衛隊特殊作戦群で採用されているのは広く知られるところだ。
USP Tacticalは1995年に追加されたバリアントのひとつで、サイレンサーの取り付けを可能とするスレッテッドドバレルと、フルアジャスタブルのハイトサイト(背の高いサイト)、さらにマッチグレードトリガーを装備した特別仕様で、9mmモデルはドイツ連邦陸軍特殊部隊KSKや、同海軍戦闘水泳中隊Kampfschwimmerといった精鋭部隊で採用されている。
メルケル首相の視察を受けるKampfschwimmerの精鋭たち。
出典:http://photobw.info
世界初のトイガン化となるTactical 9mmバージョン
多くのゲームや映像作品に登場していることから人気が高く、ガスガンとしても多くのメーカーが製品化しているUSPだが、今回BATON airsoftがリリースするBH-USP Tactical CO2GBBは9mm仕様をモデルアップしたものだ。
トイガンとしてはおそらく世界初の製品化となるそのディティールを、今回も銃口周りから詳しくご紹介しよう。
※画像は量産手前のサンプルなので、製品版では外観が一部変更される場合があります。
金属製アウターバレルはタクティカルモデルならではのスレッテッドタイプで、スレッド部分は14mm逆ネジ仕様。ブレ止めのためのOリングも、しっかり溝が刻まれた上で装着されている。
注目すべきはアウターバレルの内側で、H&K社が多くの製品に採用しているポリゴナル(多角形)ライフリングが再現されている部分だ。
トイガンといえど銃口を覗き込むのは好ましくないことだが、これまでのCO2GBBシリーズ同様、インナーバレルが黒染めされていることもあってその特徴が際立っており、前方からの眺めについつい見惚れてしまう。
通常のUSPよりも背の高いフロントサイトは、サプレッサーハイトサイト(Suppressor Height Sight)と呼ばれるもので、その名の通りサプレッサーを取り付けた状態でのエイミングを可能とするサイトになっている。背面に刻まれた反射防止のグルーブも抜かり無く再現されており、スライド左側面のUSP Tactical 9mmという刻印が伊達ではないことを物語っている。
尚、チャンバーブロックまで一体になったアウターバレルにはショートリコイルギミックが組み込まれており、スライドを引くとアウターバレルが傾いて後退する様子が楽しめる。
BATON airsoft製CO2GBBとしてはBM-9以来のショートリコイル再現となるわけだが、ガンマニアとしては単純に嬉しいポイントだ。
スライドを引いてエジェクションポートを覗き込むと、チャンバーの奥にホップアップ調整ダイヤルが設けられているのが見て取れる。
スライドを外すことなくホップの掛かり具合を調整出来るのは実に嬉しいところだが、エジェクションポートに指先を入れている際にスライドが閉鎖すると、思わぬ怪我をする可能性が考えられる。
ホップ調整の際は、上画像のようにスライドをしっかり押さえながら作業したいところだ。
尚、チャンバーパッキンにはBATON airsoft製CO2GBB シリーズで定評のあるTK-WF面ホップパッキン を採用し、20m以遠での安定した弾道を実現している。
フロントと合わせて高い位置にマウントされた金属製のリアサイトは、実銃同様に上下左右の調整が可能。フロントサイト同様、サイトブレードの背面には反射防止用の細かいグルーブが刻まれている。
リコイルが強いCO2GBBではアジャスタブルサイトに狂いが生じる可能性があるが、調整用スクリューのクリックストップ機能もしっかり再現されているので、その心配は無用だろう。
主に平面で構成されたスライド上面も、ピン穴のモールド含め、実銃のデザインを忠実に再現。
右側面のエキストラクターは一体成型のモールドながら、それらしい雰囲気を演出している。
細い凸面と幅の広い凹面で構成されたスライド後方のコッキングセレーションはH&K社のハンドガンに共通する意匠で、スムーズなスライド操作を可能としてくれる。
幅の広いカーブトリガーはダブルアクションに対応したスムースタイプで、滑らかなトリガープルに貢献。
スライドストップレバーに目を移すと、スライドを引っ掛ける部分が尖っているのが気になるかもしれないが、実際にスライドを受け止めるのは内側のブラケットなので、極端な摩耗を心配する必要は無いだろう。
尚、スライドストップの下には、JASG認定商品である証の固有のシリアルナンバーと、販売元であるBATONのロゴの刻印が隠されている。
トリガーガード付け根部分のマガジンリリースレバーは下から覗くとわかるように、左右どちらからでも操作出来るデザインになっている。
手の大きさ、指の太さ等によっては、マガジンチェンジの際に指の肉を挟んで痛い思いをする場合があるが、これはH&Kオートに共通する特徴なので、各々操作方法を工夫していただきたい。
フレーム先端のダストカバー部分には、ピカティニー規格のアンダーレールマウントが装着されているが、左側面の六角ボルトでこれを外すことにより、ユニバーサルマウンティンググルーブというH&K社独自規格の溝が入ったダストカバーが現れる。
USP本来の姿はこちらになるが、取付可能なウェポンライトの種類が極端に制限されてしまうため、扱いやすさとリアルさのどちらを採るかが悩ましいところだ。
グリップを握った右手の親指で操作出来るマニュアルセーフティレバーは、水平位置から上に跳ね上げることでセーフティオンとなり、これを水平位置に下ろすことで撃発可能な状態に移行する。
また、1911のようにハンマーをコックした状態でセーフティをかけるコックアンドロックも可能となっている。
マガジンに弾が残っている状態で射撃を止めた際、または全弾を撃ち尽くしたホールドオープン状態からスライドを前進させた際に、セーフティレバーを黄色い矢印の位置まで引き下げると、コッキングされたハンマーを安全に倒す(デコッキングする)ことが出来る。
慣れないうちは抵抗感があるものだが、BB弾が発射されることは決して無く、パチンと空撃ちしてハンマーを倒すよりは銃への負担が少ないので、積極的に活用したいところだ。
グリップについても、上下に短く前後に長い印象の形状と、両側面の荒々しい滑り止めモールドが上手く再現されている。
グリップ前面と背面のチェッカーパターンはスライド金型を駆使して成型された鋭いものとなっており、しっかりと手に食い込んでその役目を果たしてくれる。
グリップ底部は極めてオーソドックスな作りだが、開口部が比較的広いため、マガジンチェンジでもたつくようなことは無いだろう。
開口部左右の窪みはマガジンを掴んで引き抜くためのものだが、本製品はマガジンリリースレバーを下げればマガジンが自重で落下するため、使う機会は無いと思われる。
低燃費高耐久のタニオコバCO2バルブを採用したロングタイプマガジン
もはやお馴染みとなった感のあるCO2マガジンだが、同じ9mm口径のBM-9用マガジンとの互換性は無いBH-USP専用設計で、装弾数は26発となっている。
アウトプットバルブは従来通り、改造防止対策が施された特許取得済のTANIO・KOBA CO2バルブ(TANIO・KOBA CO2バルブ:実用新案 第3206631号)を採用。
改造防止のため、通常のバルブレンチでは取り外すことが出来ないデザインになっている上、Gunsmith BATON にて販売中のPUFF DINO CO2 12gカートリッジ1本あたり、連続(弾を込める時間のインターバルを挟む)で100発前後の射撃が可能という燃費の良さを実現している。
CO2カートリッジに封入された高圧ガスを安全に使用するための構造上、マガジンバンパーが下に伸びた形になっているのが少々気になってしまうが、実はこれ、まったくのオリジナルアレンジというわけではない。
出典:https://hkparts.net
H&K製品専用アクセサリーを多数製造、販売しているアメリカのHK PARTS社の製品、USP 9mm用20連マガジンが、BH-USP専用CO2マガジンのモチーフとなっているのだ。
オリジナルサイズのCO2マガジンも欲しいところではあるが、実物が存在するとなれば、この長いマガジンの印象も違って来るというものだろう。
CO2マガジンを長持ちさせるための注意点
CO2 12g カートリッジのセット方法は、マガジンバンパーを外した後、マガジン底部の蓋であるカートリッジベースカバーを外して行う従来通りの方式となっている。
尚、CO2マガジンを安全に長持ちさせるためには、セットしたCO2 12gカートリッジをその日のうちに使い切り、空になったカートリッジを速やかに取り外すことが重要なポイントだ。
カートリッジ内に液化ガスが残っていると、アウトプットバルブが常に60気圧(5.9Mpa/22℃環境下)もの高圧と、マイナス56.6℃もの低温に晒されるため、バルブのパッキンが著しく劣化してしまう。
また、CO2カートリッジが長くセットされていることで、常に圧迫されているカートリッジホルダーガスケットの弾力が失われ、ガス漏れを防ぐことが出来なくなってしまうのだ。
多少のガス代を節約するために、マガジンの寿命を大幅に縮めてしまうのでは本末転倒というものだろう。
BATON airsoft製CO2GBBシリーズも6機種目(カラーバリエーションを除く)となる今、この新しいジャンルを末永く楽しむためにも、ユーザーの皆様には今一度取り扱い方を見直していただきたい。
今回のレビューは量産手前のサンプルを使用しているため、実射性能についてはさらにブラッシュアップされる予定だが、BATON Rangeが誇る無風のロングレンジにおけるテストで、30m先のEタイプシルエットターゲットにワンマガジン26発を全弾叩き込めるだけの性能を現時点で有している。
また、両手で構えての射撃時に実銃を撃つつもりでしっかりホールドしないと、サポートハンドがズレてしまうほどのリコイルの強さも健在なので、量産品に期待して損は無いだろう。
※BATON airsoft アクリビスバイオBB弾 0.28g使用
リリースの発表からおよそ10か月に渡る研究と改良を積み重ね、確実な作動と高い耐久性を両立したシリーズ最新作、BH-USP tactical CO2GBB。
特殊部隊の精鋭たちが選んだ戦闘用拳銃の迫力を、是非とも多くの皆様に堪能していただきたい。
製品ページはこちら
[ BATON airsoft ] BH-USP tactical CO2GBB【JASG認定】
■関連リンク