東京マルイ シグ・ザウエル P228 【ハイグレード/ホップアップ】
レポート:石井 健夫
SIG SAUER P220シリーズはスイスのSIG社とドイツのザウエル(SAUER)ゾーン社によって1970年代に開発された。歴史的名銃として名高い前身=スイス軍制式採用拳銃「P47」ことSIG P210の高品質・高精度はそのままに生産工程・コストの徹底的な合理化を図った上で、さらにダブルアクアション機構をも盛り込んだ革新的な設計。1975年にはシングルスタック8+1連の「SIG SAUER P220」が完成し、スイス軍の新制式拳銃「P75」として採用された。
その後P220は米軍の制式拳銃トライアルを見据えたダブルカァラム15+1発の「P226」に発展。さらにその派生型として携帯性と軽量さを求め、1989年にリリースされたのが「P228」である。P226と同じ「9×19mmルガー」を標準弾薬とし、全長(銃身長)を16mm、マガジンの装弾数も「15発→13発」とする事で全高を8mm短縮、重量も軽量化することに成功した。
東京マルイP228のスライド左面にはSIG SAUERの特徴的なロゴの後ろに小さな文字で、1985年に設立されたSIG SAUER銃器部門・アメリカ現地法人「SIGARMS INC.」の社名と住所「Herndon-VA」の刻印がある。2007年にはこの社名が「SIG SAUER」に改称されているので、これはまさに時代を切り取った仕様だと思う。
P228はP226の小型軽量版ではあるが、開発時にはグリップにかなりの改良が加えられ「P226よりも握りやすい」と評判になり、この仕様変更は後にP226にもフィードバックされた。また厚さやカーブの異なるオプションのトリガーも設定されるなど、細部のアップグレードにも成功したP228は秘匿性・携帯性を求められる軍・警察の組織にはうってつけの拳銃であり、フルサイズのサイドアームではP226を蹴ってベレッタM92FSを採用した米軍で「M11」として制式採用された他、FBI(連邦捜査局)、DEA(麻薬取締局)といったアメリカ政府機関の多くや、ドイツ警察特殊部隊SEK、フランス特殊部隊GIGN、イスラエル陸軍といった世界の軍・司法機関も採用。さらに我が国でも警察SATや海上保安庁SST等の特殊部隊での使用も確認されている。
パッケージは横型。外寸はシリーズ共通の「縦290mm x 横180mm x 厚さ50 mm」銃の背景にはハリウッド映画にもよく登場するLAPD(ロサンゼルス市警察)のバッジがあしらわれている。
玩具店や模型店でこの状態のままディスプレイできるようにデザインされた内箱もシリーズではおなじみ。本体には赤い保護キャップが付き、グリップにはHOP-UP搭載モデルである事を示す帯。フルサイズ・マガジンもその存在感を誇示している。化粧箱入りBB弾(0.25g)150発と取扱説明書も付属。
1990年代後半、SIG P220シリーズのスライド製法が従来の「分厚い鋼板から特殊プレス加工で製造されたスライドカバーに削り出し加工のブリーチを嵌め込んだ2ピース構造」から、「ステンレス削り出しのブリーチ一体型」へと大きく変わり、P228は.40S&Wや.357SIG等のより強力な弾薬にも対応する後継モデル「P229」に代替される形で民間向けの販売は中止された。同時にこれはコレクターが所有していたP228の人気を再燃させ、その稀少価値を高めることになった。
実銃のP220シリーズは非常に耐久性が高く、P228も例外ではない。かなりの数量が全世界で活躍し、民間への販売は終了しているが製品のアフターサービスはまだまだ継続中らしい。
特殊プレス加工で成形された鋼鉄製のスライドとアルミ合金製のフレームを組み合わせた実銃SIG P228の風合いを、ABS樹脂を素材としながらも、表面加工や塗装の技術を駆使して表現する東京マルイの造形力には毎度の事ながら目を見張る。元来P228は生産性や合理化を追求したデザインなので、左右合わせのラインがさほど気にならない。チェンバーが別パーツなのもその効果に一役買っているようだ。
真鍮製インナーバレルを内包したアウターバレルには、控えめながらもマズルクラウンが丁寧に再現され、実銃SIGの高精度ぶりを演出している。
全体のボリューム感から比べるとグリップがかなりスリムで握り易く感じるのが実銃P228の特徴なのだが、このコッキングエアーガンでもその握り心地は再現されている。
トリガーはダブルアクションの引き始めの位置から動かないのでコッキングして撃つ際にはやや遠く感じるものの、「880g〜1.17kg(※LYMANデジタルゲージによる実測値)」と軽く切れの良いトリガープルは心地よい。
なお、このP228ではデコッキングレバーにマニュアルセフティの機能があり、スライド方向に上げた状態で「ON」となる他、ハンマーをハーフコックに戻す機能こそないものの、ほぼ実銃通りに動かすことができる。
分厚い鋼板から特殊プレス加工で製造されたスライドカバーに削り出しのブリーチを嵌め込み2重ロールピンで固定している、という独特なスライド。前方に見える美しい段差や、大きく丸みのある後部の形状、そしてタップリと長く入った滑り止めのセレーションなど、SIG P228ならではの造形が余すところなく再現されている。
ハンマーはスライドのコッキングに合わせて起き上がる他、指で起こすことも出来る。ダブルアクション作動はせず、また起こした際の形状がやや細過ぎるのだが、しかしシリーズの初期段階で実行されたギミックへの果敢な挑戦は大いに評価したい。
実銃のSIG P226やP228をかなり数多く撃っている筆者の眼から見ても、狙った際の景色がとてもリアル。特にスライドの丸みのある艶消しなアウトラインがじつに本物っぽい。リアサイト、フロントサイトが角がクッキリ立って狙い易い。
サイトアライメントは上下左右ともしっかり合っているのだが、今回レポートした個体ではややHOPが強めで、0.20gBB弾では15〜20m辺りでBB弾がかなりの急上昇を見せた。0.25gBB弾ではだいぶ軌道も落ち着きを見せ、シリーズに付属してくるBB 弾が「0.25g」である理由がなんとなく解った気がする。
箱に書かれたシリーズNo.は「2」と、やはり初期のモデルであるP228のコッキングはシアが掛かるまでのストロークが24mmのシンプル・タイプ。幅も高さも十分にあり角に丸みのあるスライドは力を込めて掴み易く、結果的に素早い連射が容易に行える「サバゲーでの使い勝手が良いモデル」となっている。
チェンバー(を模した蓋状のパーツ)がスライド後退と共に沈み込むように可動し、エジェクションポートが半分ほど開くギミックがマニア心をくすぐる。
装弾数24発のマガジンは長さがやや短いが幅や厚みは実物と同じ。短めなグリップに対応するフィンガーレストも兼ねたベースプレートは別パーツなのでより一層リアルだ。なお、このシリーズに使われているマガジンは「ホップアップ専用重量タイプ」なのだそうで、内部にはウェイトが入っている。
P228用マガジンの重量は119g。マガジンキャッチを押すとスムーズに自重落下してくる。左右合わせ構造なので右側に2箇所(+)ネジが見えるが、実銃マガジン特有の凹み加工にうまく紛れている。
スペック
全長 | 180mm |
重量 | 419g (実測値) |
装弾数 | 24発 |
価格 | 3,500円(税別) |
発売日 | 1993年7月30日 1993年11月26日(ホップアップタイプ) |
発射方式 | スプリングエアー・ハンドコッキング、ホップアップシステム搭載 |
初速 | 最高:59.3m/s 平均:58.31m/s 最低:56.6m/s ジュール:0.390J |
※東京マルイ ベアリングバイオBB弾 0.2g使用、固定ホップアップ、室内10発での測定、気温19度、湿度29%、ACETECH AC5000にて測定。
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