MGC S&W M459 / M659
写真&解説 小堀ダイスケ
解説
ベレッタM93Rのメガヒットからはじまった、MGCのスライド固定ガスガンシリーズ。リキッドチャージのマガジンにバレル後退式という発射機構は、以後、様々なモデルに流用され続けることとなった。
スライドが動かない以上、ダブルアクションでなければ連射ができないため、S&W M459という機種選択はこのシリーズにうってつけだった。メカニズムの都合上、トイガン業界のドル箱である1911系に手を出せない(結局はハレットアクションという形で強引に製品化に踏み切ったが)のは、当時のMGCにとって頭痛のタネだったことは間違いないだろう。
しかし、1911が出せなくても、MGCにはまだ他の切り札があった。モデルガン時代に超メガヒットを記録した、S&W M59である。当時、モデルガンの常識をくつがえす15発+1発のブローバックとダブルアクションメカ。TVドラマ『太陽にほえろ!』で、神田正輝が演じるドック刑事がM59を愛用していたこともあいまって、M59はガンファン憧れの存在だったのだ。
実際には、M459という新型に更新されてのモデルアップとなったわけだが、M459の向こうに在りし日のM59の勇姿を思い浮かべ、ひそかに涙していたというガンファンは多かったはずだ。
機種選定そのものに勝算があったからなのだろうか、実射機構には特に特徴がなく、M93Rで完成された性能をそのまま引き継いでいた。しかし、外観はかつてのモデルガンM59をはるかにしのぐ素晴らしい出来で、MGCの花形時代を代表する、名銃のひとつだったといっても過言ではない。
パッと見、M59との違いが見つけにくいが、スライドストップ軸を受ける部分のフレーム厚が増している。実銃ではここにクラックが入るというトラブルに対処するための改良だ。
セミグロスのスライド、ヘアライン入りのフレーム、グロス仕上げのグリップと、黒一色ながらメリハリのあるコントラストが見事に再現されている。ロングスライド版のM559、そのマッチ仕様のM759スーパー・マスターも発売された。
ステンレスモデルのM659もラインナップされていた。当時のガンファンはシルバーフレームのツートンカラーに強い憧れを抱いていたもので、それを意識してか限定1000丁としてレーザー・チェッカーの木製グリップ、レッドランプ、ブラックタイトインナーバレルを標準装備したM459 リミテッド・エディションも発売された。
M59からのもうひとつの改良点がここ。ガードつきのフルアジャスタブルリアサイトが搭載されている。MGCでは、上下方向のクリックを省略することでコストダウンをはかったようだ。セフティレバーは機能するが、デコック機能はない。
インナーバレルは真鍮製。S&W M645や、ベレッタ M92Fより以前の製品なので、サイクロンバレルではない通常のバレルだ。アウターバレルにはライフリングのモールドが入っている。
エジェクションポートから見えるチャンバーと、スライド側面から斜めに飛び出ているエキストラクター。今にも動きそうなこの再現性こそがMGCの真骨頂だった。
フレーム側面のヘアラインは、言うまでもなく金型の段階で入れられているモールドだが、まるで本当に機械加工で切削した跡のように見える。
スチールプレス製のリキッドチャージマガジン。M93Rではエアチャンバーシステムに始まり、ボンベ内蔵型など、何度も改良をくり返したパーツだが、そのおかげで完成度が高く安定したガス圧を維持する。M659用はメッキ仕様。
装弾数は15発。往年のM59そのままの数字だ。バルブは露出しておらずカバーされているため、上から見たアングルでも外観に統一感がある。
DATA
発売年 | 1986年6月28日 (M459) 1986年秋 (M659) 1986年冬 (M459 リミテッド・エディション) 1986年12月上旬 (M559) 1987年1月 (M759 スーパー・マスター・カスタム) 1987年3月上旬 (M759 スーパー・マスター) |
発売時価格 | ¥9,200 (M459) ¥11,000 (M659) ¥18,000 (M459 リミテッド・エディション) ¥7,300 (M559) ¥22,000 (M759 スーパー・マスター・カスタム) ¥12,000 (M759 スーパー・マスター) |
全長 | 実測 192mm |
重量 | 実測 790g |
バレル長 | 94mm |
発射方式 | リキッドチャージ式スライド固定ガス |
使用弾 | 6mmBB弾 |
装弾数 | 15発 |
平均初速 | 42.7m/s |
撮影協力:サタデーナイトスペシャル
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