米ドラマ『ザ・シューター シーズン2』の登場銃器解説
スティーヴン・ハンターによる原作小説を貪るように読んだコダワリの銃器ファンが『極大射程』というタイトルに期待した全ての要素が「遂に余すところなく映像化された!」 と絶賛を浴び、大ヒットしたTVシリーズが「ザ・シューター」だ。
2016 年11月から全米で放送が開始された「シーズン1」は大反響を呼び、「SUITS/スーツ」「MR.ROBOT/ ミスター・ロボット」など多くのドラマ人気作を持つUSAネットワークでは年間最高視聴者数を獲得。数ある名作ドラマや大ヒット作の仲間入りを堂々と果たした。
日本では2017からNETLIIXが独占配信。さらに2018年2月にリリースされたDVDは 「TSUTAYA海外ドラマ月間レンタルランキング」で第1位を獲得する等、こちらも大きな話題となった。
そしていよいよ、待望の「シーズン2」がリリースされる。ストーリーは『極大射程』から始まる<スワガー・サーガ>シリーズ第3作『狩りのとき』をモチーフとしたオリジナル脚本となっている。
ストーリー
ウクライナ大統領狙撃暗殺事件(=「シーズン1」)のほとぼりもようやく収拾した頃、ボブ・リー・スワガー(ライアン・フィリップ)は妻ジュリー(シャンテル・ヴァンサンテン)と共に、戦友の叙勲・表彰式に出席するため、ドイツ・フランクフルトに赴く。しかし会場が突然、警官隊に偽装した武装集団に襲われ、多数の死傷者が出る。
「シーズン1」でもその不気味な存在や脅威が示唆されながら本人は姿を現さなかった伝説のスナイパー、ソロトフ(ジョシュ・スチュワート)が遂に登場。アフガン派兵時代の戦友たちその他、スワガーの周囲の者たちに対して容赦のない直接攻撃を加えてくる。
さらにシーズン1=『極大射程』ではスワガーを裏切り、敵対し、その後はタイに身を潜めていた元上官のアイザック・ジョンソン(オマー・エップス)を悲劇が襲う。スワガーとジョンソンはお互い不信感を抱きながらも協力して敵を調査する事に。
アフガン派兵の際、現地での大規模な麻薬取引の現場を担当した際に接触した秘密組織「アトラス」が襲撃の背後にあることが徐々に判明。CIAはじめ合衆国政府中枢にも深く入り込んでいるアトラスは過去の秘密を守るべくソロトフを雇ったのだった。スワガーの戦友は何れ劣らぬ強者たちだが、奸智に長けたソロトフの凶弾に倒れてゆく。
「シーズン1」でスワガーと共闘し事件を美事解決に導いた功労者のハズが、何故かFBIでは冷遇が続くメンフィス捜査官(シンシア・アダイ=ロビンソン)も独自の捜査で「アトラス」の秘密に迫る。そしてその腕を買われた彼女は、政府上層部から更に危険な極秘ミッションのオファーを受ける。
「アトラス」暗躍の証拠を求めてメキシコの刑務所からロシアンマフィアのアジトまで、あらゆる危険を顧みずに飛び込んでゆくボブ・リー・スワガー。
いっぽう、長引くばかりの夫の不在と先の見えない状況に苛立つスワガーの妻ジュリーはテキサスの地元で些細ないざこざに巻き込まれ、思わぬトラブルに発展してしまう。
なお、全米では2018年6月から「シーズン3」が放映され、この「シーズン2」を美事に引き継いて物語は完結している。先ずはこのシーズン2で、ボブ・リー・スワガーの熱い戦いを見届けよ!
銃器解説
H&K G36
ドイツのH&K(ヘックラー・ウント・コッホ)社が’90年代に自国軍・警察用に開発した「5.56×45mmNATO弾」を使用するアサルトライフル。外装にはカーボン繊維入りの樹脂を多用しており軽量。また現代的な戦闘スタイルに対応するため、徹底的なアンビデクストラウス(=左右均等)化が図られている。このように外観は未来的・先進的だが内部メカニズムには敢えて第二次世界大戦当時に造られた最初期の自動小銃から引き継がれる「ロッド作動型ガスピストン方式」を採用し、確実な作動性能を実現している。中東諸国の過酷な気象条件下では耐久性と精度に問題が多発し、ドイツ国防軍からの退役がほぼ決まっているものの、後継モデル選びはかなり難航しているようだ。もっとも、都市部の警備や警察任務には非常に向いている銃だといえる。
本作ではドイツ・フランクフルトが舞台のシーンで、テロリスト達が短縮版の「G36C」を、事件後の警備に当たる現地警察官がフルサイズ版の「G36E」を使用している。
DRD Tactical Paratus-16-LR-B
「小型のバックパックに収めて何処へでも携帯できるスナイパーライフル」として、各特殊作を装備面で支援する担当する「JSOP(=Joint & Special Operations Program)」の要請で開発された分解組み立て式の狙撃銃。ソロトフがフランクフルトでの狙撃で使用。
「7.62×51mmNATO弾」仕様で銃身長は16インチ(=約40.64cm)と、狙撃銃としては短めで超長距離の射撃には向かないが、そのぶん先端に大容量のサプレッサー(=減音装置)を取り付けても許容範囲内の長さに収まる。
もちろんソロトフは現場への銃の持ち込みや組み立て、さらに射撃する距離等を充分に検討した上でこの銃をチョイスしたのだ、と思われる。
H&K MP7A1
タイに潜伏中のアイザック・ジョンソンと妻を襲撃する「アトラス」の暗殺部隊が、アタッシュケースにこの銃を隠し、必要ならば収納したままでも発砲可能な「コッファー・スタイル」で使用する。ドイツのH&K(=ヘックラー・ウント・コッホ)社が’90年代、軍用機のパイロットが撃墜された際のPDW(=パーソナル・ディフェンス・ウェポン/個人携帯火器)として開発。折りたためば約30cm程という大型拳銃程度の大きさながら、「4.6×30mm小口径高速弾」の採用により200m以上の有効射程距離を実現し、高い貫通性能で防弾ベストを着た相手との交戦をも可能としている。
Mk11 Mod.0(Knight’s Armament SR-25)
市街地戦闘で想定される「複数目標に対する中〜長距離の銃撃戦」に対応すべく、2005年から海兵隊が採用している「7.62×51mmNATO弾」仕様のセミオート狙撃銃。有効射程は600mと言われている。いち早く導入した海軍や海兵隊での採用名が「Mk11 Mod.0」であり、同じ「Knight’s Armament SR-25」をベースとした改良型は「M110」として後に陸軍にも採用された。
アフガニスタン派兵時代のスワガーが運用を担当していた銃なので、戦場の回想シーンで必ず登場する。シーズン1では自宅や隠れ家にも同型・同仕様の銃(※海兵隊時代と同じ個体なのかは不明)を所持している事が描かれていた。
Colt M4A1
現在、米全4軍(陸軍、海軍、空軍、海兵隊)がメインで採用している「5.56×45mmNATO弾」仕様のアサルトライフル。もちろん制式採用銃だけに、本作でもアフガニスタン派兵時代の回想シーンで多数登場する。
ヴェトナム戦争から採用され続けている「M16」が度重なる改良と改修を受けて進化を重ね、現在のこの銃身長、形状に行き着いている。採用からかなりの時間が経過しているため後継機の噂はいつも絶えないが、さりとて決定打となるような銃の登場も未だ無く、今後も米軍はこのM4A1に様々な要素をプラスしつつ、さらに長期に渡って使用し続けるのでは? とも言われている。
M1911Custom
米陸軍が1911年に制式採用し1985年に退役するまでのじつに74年間、第一線で使われ続けた伝説的な軍用拳銃。日本では「コルト・ガバメント.45」の異名で知られ、アメリカ人には「1911=ナインティーン・イレブン」と呼ばれ親しまれている。各部に手を加えて操作性を向上させたいわゆる「カスタム1911」を射撃競技用や護身用として愛好するアメリカ人は多い。本作ではボブ・リー・スワガーの父親アールの形見として登場。「シーズン1」での家族の危機を経験した妻ジュリーがこの銃で射撃練習に勤しむ姿が描かれる。
Glock G17
長らく自国オーストリアの軍需物資を製造していたものの、銃そのものについては門外漢だったグロック社が、既存にない大胆な発想と設計を盛り込んで開発したセミオート・ピストル。1983年のオーストリア軍・警察の制式採用を皮切りにしてその高性能と耐久性から全世界に拡散し、いまや全世界で最も採用数・販売数が多い拳銃となっている。中でもG17はシリーズの基本となる「9×19mm弾」仕様の最もベーシックでポピュラーなモデル。アイザック・ジョンソンの愛銃としてはもちろん、敵・味方を問わずで数多くの登場人物がこの銃を手にし、使用する。
Modern Outfitters MC7 Long Range Carbine(AR-10 Custom)
AR系自動小銃の操作性や耐久性を上げる目的で様々な改良を施したハイクラスのカスタムライフルが、「アトラス」を追求するスワガーとジョンソンの作戦行動で使用され続ける。元スナイパーのスワガーは、ジョンソンや仲間の観察・支援に当たる事が多いため、自然と彼が手にする銃はより長射程で狙撃に向いた「7.62×51mmNATO弾」仕様の「MC7」という事になる。ちなみにこの銃を製造するメイカーのWEBサイトには、スワガーを演じるライアン・フィリップがこの銃を使用して役作りのための射撃練習に臨んだ事が報告されている。
Modern Outfitters MC6 Carbine (AR-15 Custom)
実際にターゲットに接近して捜査に当たるアイザック・ジョンソンの手にはより機動性に優れた「5.56×45mmNATO弾」仕様の「MC6」が握られ、凄まじい速さで敵戦闘員を葬る射撃術が披露される。中・長距離用を精確に狙い撃つためのセッティングであるズーム・スコープと、至近距離から突然現れた的に対処するため斜め45度に取り付けられたアイアンサイトの組み合わせに注目したい。
SIG SAUER P320
2017年に長く続いていたトライアルを勝ち抜き、米陸軍の次期制式採用拳銃MHS(=モジュラー・ハンドガン・システム)である「U.S.M-17」の座を勝ち取った最新の軍用拳銃。言わばスイスとドイツの合作製品で、銃本体が簡単な手順で数個のユニット単位に分かれ、任務に合わせて銃身の長さ、使用弾薬、本体の色等を自在に変更できるのが特徴となっている。メキシコの刑務所に収監されたスワガーとジョンソンを狙うソロトフがこの銃を使用。恐らく映画やドラマにP320が登場した最初の作品が本作と思われる。
SVD Dragnov
ロシアとの内戦を回想するシーンでソロトフが使用する狙撃銃。ロシアでは19世紀から使用され続けている「7.62mm×54R」という優秀な弾薬を使用するセミオート式のスナイパーライフル。細身な外観に似つかわしく軽量であり速射性にも優れていたため、単独で行動し神出鬼没のゲリラ・スナイパーの機動性を高める効果があり、ヴェトナム戦争時代の米軍はこの銃の鹵獲に躍起になっていた、とされる。狙撃銃としての高精度はもちろん、耐久性にも非常に優れている。いま現在も世界各国の戦場に相当数が投入されているという。
D&L MR-30 PG as“Black King”
伝説的な軍用拳銃M1911A1と同型のグリップが特徴的なキャリングハンドル付きモジュラー・ストックを各社の銃本体と組み合わせてオーダーメイドで製作されているD&Lスポーツ製カスタムライフル。本シリーズにはスペード、ハート、クラブ、ダイヤのキングがグリップに刻印された、「この世に4挺しかない幻のライフル=ブラックキング」として登場する。
この銃はシーズン1で年齢や背格好、世捨て人的な生活ぶりなど、小説版のスワガーをそのまま映像化したようなキャラクターとして登場し原作ファンを大いに喜ばせた海兵隊時代の狙撃教官=オブライエンから贈られたもので、シーズン2でも重要な射撃データの検証場面に登場し、スワガーが所有する数々の狙撃銃の中でも「最上級の1挺」として存在感を放つ。
Noveske Diplomat
アメリカ、オレゴン州に本社を置く「ノヴェスキィ・ライフルワークス」が制作したARカスタムの一つ。7.5インチ(=約19cm)にまで短縮された銃身と折りたたみ式のストックによって秘匿性に優れ、しかしイザ銃撃戦となればフルサイズのアサルトライフルとほぼ変わらない威力と戦闘力を誇る小型軽量火器だ。
作品データ
『 ザ・シューター シーズン2』
2018年12月5日(水)リリース
DVD-BOX(4枚組/全8話収録) ¥9,300(税抜)
レンタルVOL.1〜4 (各2話収録)
発売・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
©2018 Paramount Television and Universal Cable Productions. LLC.
公式サイト: http://shooter-tv.jp/
『ザ・シューター シーズン1 <トク選BOX>』同時発売
5枚組/全10話収録 ¥4,757(税抜)
■解説者プロフィール
石井 健夫(いしい たけお) 1967年12月、東京都生まれ。 |
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