2011年10月30日に埼玉県東松山市の田村トレーニングセンター(TTC)にて開催されたTRES(トレス) 三社合同訓練の体験レビュー。乙夜さんプロデュースによるプロの講師陣を迎え、ラペリング、CQB、格闘の三種を一日で体験できる充実の訓練イベントにいってきたので、さっそくレビュー。
本日の講師陣。左から田村装備開発代表の田村氏(元県警特殊部隊)、格闘講師の武術家の水月氏、プロデューサー乙夜さん、CQB講師の吉岡氏(元県警特殊部隊)、そして田村装備開発講師の長田氏(元陸上自衛隊特殊部隊)。何とも贅沢な講師陣だ。
TRES(トレス)とはスペイン語で「3」を意味し、今回の三社合同訓練の名称として名付けられた。
この日は20名の受講者が参加した。本職の方もチラホラ混じっている。もちろん初体験の女性もいた。
20人を3グループに分けて、ラペリング、CQB、格闘をそれぞれ約2時間づつ体験する。
まずはラペリングから。講師は田村氏と長田氏。地上20mのラペリング塔の15m部分からロープ降下する。
最初に5mの地点で田村教官実演による基本知識の講習が行われる。
降下姿勢や降下方法、安全管理手順などを教わる。
エイト管、カラビナへのロープの取り付け方もこのときに教わる。
ハーネスやカラビナなどの装具はすべて安全管理されたTTCのものを使用した。
ロープの持ち方を教わる。
右手は軽くロープに添えるだけで良いとのこと。でも緊張するとぐいっと握っちゃうんですよ、コレが。
階段を一人一人上って地上15m地点へ行く。
このくらいの高さが一番怖く感じる。
降下地点からは埼玉県東松山市ののどかな田園風景が広がるのだが、そんな景色を堪能している余裕もなく、終始ドキドキしっぱなし。YASもこの日、ラペ降下を初体験した。
ローブをジリジリと緩めながら、背後の降下口へ後ろ歩きに向かう。そしてエッジに爪先立ちになり、「降下用意、降下!!」と叫んで、そのまま背中からグググッと腰をくの字に折り曲げて降りていく。「支点よし、接地点よし!!」とロープの確認も声を出して行う。
テクテクと後ろ歩きするように壁を降下する。慣れれば壁をポーン蹴って降下する「ハング」と呼ばれるテクニックにトライすることもできる。
さらに上級者になると、くるりと下向きになって、するすると降下するスパイダーというテクニックにチャレンジする受講者もいた。
下を見ちゃうと結構怖いんだけど、凄いなぁ。
で、この降下を三回実施してラペリング講習の前半は終わり、後半のボルダリングへと続く。
ラペリング塔の横にあるコンクリートの壁にカラフルな突起が沢山取り付けてある。これはホールドといって人工の足場になり、これを指先やつま先で保持しながら壁を上る。ボルダリングと呼ばれるいわゆるフリークライミングの一種だ。
まずは簡単な足場でYASがトライ。約5mほどの壁を自分の手足の力だけで登る。安全管理上、ハーネスにロープを付け、教官が確保をしている。いやはや、これが結構しんどい。
TTCの場合はこれにタクティカルベストやライフルを装備しておこなう「タクティカル・ボルダリング」を今後の展開として検討しているみたい。
続いて低い位置を横に移動するトレーニングを行った。これもかなり間隔の広いホールドをどのような手順で渡っていくか考えながら実施。でもあまり考えていくと疲れてくるし、みたいな。私は全然だめだったんだけど、1名クリアした受講者がいた。
A-TACSがボルダリングのコンクリ壁にベストマッチ。微動だにしない受講生のK.BOUさん、迷彩効果が高すぎ。
続いてはCQBトレーニング。エアガンを使用してキルハウスの中で訓練が実施された。
まずは銃器の取り扱い基本を学ぶ。銃口管理から基本射撃、ハイ、ミドル、ローの三姿勢射撃、移動射撃などを実施。
受講者の中にはエアガンを所有していない人もいたので、レンタルガンも用意された。
突入のエキスパート、講師は元県警特殊部隊の吉岡氏。これはカッティングパイを実演しているところ。カッティングパイというのは部屋の入り口から内部を検索する際に、円弧を描くように移動して少しづつ部屋の内部をクリアしていくテクニック。赤いラインで壁を作るようにしてはみ出さないように視線を置く。
部屋の中に座っている敵に気づかれずに、こちらが先に相手を発見するという訓練。
敵がバリケード裏に潜んでいる可能性もある。その場合は仲間と協力し、二番手にバリケードをロックさせて一番手が室内検索を続行する。
数名による室内突入訓練を実施。ダイナミックエントリーと呼ばれる動的な動きをトレーニングした。
最後は格闘訓練。講師は水月氏。覆面をしているのは忍者っぽい雰囲気を演出するためだとか。
水月先生、しゃべりも軽快で楽しく、わかりやすかった。相手に掴みかかられたときの脱出方法や、素手、棍棒やトレーニングナイフなどを使用しての護身を中心としたトレーニングが実施された。
水月先生にかかれば二人ががりで掴みかかってもあら不思議。暴漢はイテテテテとなってしまう。
私YASも実際に水月先生に素手で組み付いたり、ダミーナイフやAK47(の訓練銃)で襲いかかってみたが、歯が立たず...。
十手で暴漢の振りかざすナイフを手玉に取る。まさに現代の忍者みたいな水月先生だった。
ちなみに助手は三戦警護士事務所の代表、丸茂氏が勤めた。
さて、実際に体験しながらTRESを取材してみた感想を。
ラペリングは思っていたよりも実際にやってみると怖くはなかった。正直、YASは高所恐怖症なのだが、カメラ片手に撮影しているときよりもハーネスとロープを付けてしまった方が断然安心感がある。むしろ今回体験してみて気持ちよく、楽しく体験できた。ラペリングに対する恐怖心は一気に吹っ飛んだ感じだ。
ハングもできたし、次回ラペリングに挑戦するときはスパイダーを試してみようかな、なんて。
ボルダリングも筋力的に辛いけど楽しかった。最近は体重も重くなったし、なかなかクリアするのは大変だけど、これは楽しみながら健康的なトレーニングだなとも思ったり。なんと言ってもひどかった肩こりが翌日からはすっきり直っていたことも凄いなと思った。毎日パソコン相手にして凝り固まった筋肉をほぐす効果は抜群だ。
CQB訓練はマズルコンシャスやチャンバーチェック、射撃姿勢のレクチャーが少々省略されていたが、もっとキッチリと講義されても良かったと感じた。場所が狭いのでプローンよりもモディファイドを教えるとかね。
カッティングパイやダイナミックエントリーなどを元特殊部隊員から教わるチャンスはあまりないので参考になった。ただ、あまりにもカッティングパイの訓練が長かったので、エアガンを撃つ訓練はほとんどなく、チームを二手に分けていたので、できれば突入側と防御側に分かれてのちょっとした突入想定訓練なんかがあればもっと面白くなったかも。
格闘訓練は戦う訓練と言うよりは護身術に近い訓練。相手と組んだときにどの位置取りをすれば有利になるか、相手から脱出という内容はためになった。水月先生のしゃべりもよかったし、もっと講義を受けたい気分になった。
いずれにしても第1回TRESは楽しく開催され、各講義を短いながらもエッセンスを味わうことができるイベントだったと思う。体験してみて楽しいと感じた講義は、より深く体験できるカリキュラムもTTCには用意されているので、これぞと思うものは挑戦してみると良いだろう。