『戦略航空偵察─知られざる平時の戦い』
西山邦夫著(元空将補)
A5判320ページ 定価2400円+税
航空偵察は秘匿された軍事行動であり、外部に公表されることはない。冷戦期、わが国周辺で9機の米大型偵察機が撃墜され、多くの乗員が犠牲になったことは知られていない。キューバ危機はU‐2偵察機の情報が発端となって勃発し、その1機が撃墜された。最近の北朝鮮の核・ミサイル開発に対する監視活動は偵察機なくしては成立しない。歴史をひもとけば、航空偵察がもたらした情報により、国家の命運に影響が及んだ事例が数多く見られる。本書は、この知られざる戦略偵察飛行の活動の実態をCIAの秘密解除資料などをもとに検証。とくに東アジアで活発化する偵察活動が何を意味するのか、その真相に迫る!
著者のことば
偵察飛行は、秘匿された軍事行動であり、外部に公表されることはない。わが国の周辺でも、冷戦期から現在に至るまで、平時であっても偵察機による活動が知られることなく続いている。
時折、防衛省が発表する外国軍用機の接近飛行や、領空侵犯があった場合の相手国への抗議によって、その一端を知るだけで、全体像が明らかにされることはない。
本書は、この知られざる戦略偵察飛行の歴史的推移と活動の実態を最新の公開データをもとに検証したものである。とくに東アジアでどのような偵察活動が行なわれているかを可能な限り明らかにする。
目 次
第1部 戦略航空偵察
第1章 戦略航空偵察とは何か
第2章 航空偵察の歩み
第2部 冷戦期の航空偵察
第3章 朝鮮戦争前後の偵察活動
第4章 冷戦初期の対ソ連偵察飛行
第5章 U‐2偵察機の登場と活躍
第6章 U‐2撃墜事件
第7章 キューバ危機と航空偵察
第8章 台湾政府の中国大陸偵察
第9章 ベトナム戦争と航空偵察
第10章 EC‐121撃墜事件
第11章 ソ連機による偵察活動
第12章 A‐12とSR‐71
第3部 冷戦後の航空偵察
第13章 湾岸戦争での航空偵察
第14章 EP‐3衝突事件
第15章 ロシア軍機の対日偵察活動
第16章 北朝鮮の核・ミサイル監視
第17章 中ロの軍事協力と航空偵察
第4部 航空偵察の価値と将来
第18章 中国軍の演習と米軍の偵察活動
第19章 偵察衛星と無人偵察機
第20章 有人偵察機は使い続けられるか?
終章 航空偵察と日本の立ち位置
[コラム]
UFOに間違えられたU‐2偵察機
ソ連戦闘機はU‐2を撃墜できない
中国空軍によるF‐104の撃墜
オープン・スカイ条約
西山邦夫(にしやま・くにお)
1936年生まれ。防衛大学校卒(4期・空)。情報関係略歴:航空幕僚監部調査2課収集1班長、航空総隊司令部情報課長、陸幕調査別室主任調整官、航空自衛隊幹部学校主任教官。最終階級は空将補。著書に『肥大化する中国軍(空軍部分を執筆)』(晃洋書房、2012年)、『中国をめぐる安全保障(空軍部分を執筆)』(ミネルバ書房、2007年)。研究論文に『中国空軍の戦力構成とドクトリン』『中国空軍のSu-30MKKとインド空軍のSu-30MKI』『韓国空軍の増強と近代化』『中露合同軍事演習』『中国の主要航空兵器の装備化実績と将来予測』『中国空軍の戦力とドクトリン』『チベットにおける中国の軍事態勢整備』などがある。