東京マルイ ガスガン 89式5.56mm小銃〈固定銃床型〉
東京マルイが2017年秋に開催された東京マルイフェスティバル4にて発表した89式5.56mm小銃のガスブローバックガンが2018年7月に遂に発売となった。
これまでも東京マルイは89式小銃のスタンダード電動ガンを発売しており、人気モデルだった。今回さらにガスブローバックガンもラインアップに加わり自衛隊ファンには見逃せないモデルだろう。
89式小銃は戦後初の国産ライフルである64式小銃の後継として1989年に自衛隊に制式採用された5.56mm×45弾を使用するライフル。米国を中心としたNATO諸国のライフル小口径化が進み、日本もそれに対応する形で採用された背景がある。
89式小銃は豊和工業によって開発された純国産の自動小銃で、一般的な固定銃床型と、空挺隊などで使用される折り曲げ銃床型の2タイプがある。今回東京マルイがガスガンとしてモデルアップしたのは固定銃床型。
89式小銃 実銃レビュー
ハイパー道楽のツイッターフォロアーを対象に行った事前アンケートでもダントツに要望が多かった89式小銃のガスガン。果たしてその性能は、リコイルの感触は?
今回もフライングスクワッドにて市販品を購入したので早速レビューしてみよう。
パッケージはODカラーで布引きされていて柔らかな質感。パッケージサイズは幅100cm x 縦33cm x 厚11cm。マルイロゴの左右には日本製、純国産の文字が。
パッケージ内容は本体、マガジン、バイポッドに加え…。
保護キャップ、チャージャー、チャージングロッド、フロントサイトアジャストツール、バレルナットレンチ、クリーニングロッド、取扱説明書とオマケの0.2gBB弾 100発。
スペック & 弾速データ | |||||||||||||||||||||||||
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パーツリスト1 パーツリスト2 |
レシーバーは亜鉛ダイキャスト製。レシーバーの刻印は電動ガンとは異なり、現行型で採用される89Rの刻印に変更された。また左面セレクターも標準装備。
細身のスタイルながら剛性もまずまず高く、マガジン含めた実測重量も3,640gと実銃とほぼ同じ重さを再現している。バイポッドを取り付けると実測で4,050gとなり、かなり腕力を必要とする。
コッキングノブはボルトに固定されており、射撃時には前後に激しく動く。
ボルトをホールドオープンした状態。フルストロークでボルトが後退する。ちらっと見える銀色のロッキングリセスもカッコいい!!
ダストカバー。ボルトが前進している時は塵が入らないよう手動で前進させておく。
レシーバー上部にはベースがある。実銃では本来は薬莢受けを取り付けるためのものだが、ドットサイトなどの光学照準器を取り付けることも多くなってきた。このベースは電動ガンとは異なり、アッパーレシーバーと一体となっており、形状も実銃と同じになった。
89式本体と同時発売のオプションパーツ、マウントベース。ベースがリアル形状になったので、電動ガン用のマウントベースとは互換性がない。2ピース構造で左右からベースを挟み込み、2か所でネジ止めする。このマウントベースを装着するとレシーバーに4か所ほど傷が付きやすいのが難点。レシーバーの塗膜が弱いのかな?
今回はサイトロンジャパンのドットサイト、MD-33Xを搭載してみた。
MD-33Xの詳細レビューはこちら
89式にははやりMD-33Xが似合う!!
ドットサイトに付属するマウントリングで問題なく取り付けられる。
アウターバレルはアルミ製。中ほどに取り付けられているリングは着剣用のラグ。またガスブロック左側にはスリングフックがある。なお、着剣ラグは底部からネジ止めされていて、レールの厚みなど実銃とかなり異なる。
フラッシュハイダーはダブルナット方式なので、取り外すにはまず、付属のバレルナットレンチを使用してバレルナットを緩める。ネジロック材が付いているのは最初はものすごく固い。
そうするとフラッシュハイダーが取り外せる。ネジ規格はM14逆ネジ仕様。
フロントサイトは付属のアジャストツールで上下調整が可能。その前にあるダイヤルはガスレギュレーターの調節ダイヤル。ガスガンではダミーの機能だが、回転させることができる。実銃ではこのダイヤルに位置を示す小さな穴が3か所開いているのだが、マルイの89式では再現されていない。また銃口側の形状も実銃では閉じている形状だが、マルイのはただの筒状となっている。細かい部分だが、再現してほしかったなぁ。
リアサイトは左右のダイヤルで上下左右の調整が可能。上下は左のダイヤルで調節し、100mから500mまで50m間隔で9段階あるが、450と500では高さが変わっている感じがしなかった。
500を超えて回すとリアサイトがベース内に収納される89式小銃独自の仕組み。
実銃同様にスチールプレスと樹脂パーツを組み合わせた三角断面のハンドガード。
バイポッドを折りたたんだ状態。スパイクがハンドガード下の穴に収まる。
バイポッドを立ててプローン射撃。専守防衛の自衛隊伝統の射撃スタイル。またバイポッドは取り外すこともできる。
グリップは実銃同様に樹脂製。マットな質感でさらりとした握り心地。左面にのみサムレストがある。電動ガンと比べると、前後長が少し長くなり、幅が薄くなっている。
グリップ内部はコンパートメントスペースになっていて、背面の穴から細い棒で押して蓋を開ける。
グリップ内にモノを入れると紛失しやすいので、野外演習などでは何も入れないと元自衛官から聞いたことがある。また黒のビニールテープで蓋を固定してある89式も公開演習ではよく見かける。
グリップ奥には固定用のネジが見える。
マガジンは亜鉛ダイキャスト製で装弾数は35発。半艶のメタリックグレーといった塗装色で、左側面には残弾確認孔のモールドあり。穴から見えるカートを金色に塗ればよりリアルに!
それと、もともとの89式の設計だが、マガジンハウジング部がタイトなので、マグチェンジが慣れないと難しい。
マガジンボトム。なお、マルイのM4カービン系ガスブローバックのマガジンと互換性がある。いわゆる実銃で言うところのSTANAG規格との互換形状だ。マガジン重量は実測で約470g。
レシーバー右側にあるマガジンキャッチボタン。実銃の設計上の問題だが、小さくて押しにくいのと、ガードリブがないので不意に押されてしまわないように注意。ボタンの上には東京マルイの刻印がある。電動ガンより浅く小さめの刻印で控えめ。
ボルトキャッチ。リリースするにはボタンを下げる。形状的には下から上に押すように受けた形状なので間違えやすいが、これも実銃同様の仕様。
トリガーはシンプルなスムースタイプでM4等に比べるとややストレート形状になっている。
今回Lymanのデジタルトリガープルゲージで測定したところ、約2.6kg (約5.7ポンド)だった。ガスブロM4A1 MWSのトリガープルが約1.3kgなので、M4に比べるとかなり重め。
セレクターは独自の回転型で、ア(安全)位置から → レ(連発) → 3(三点射) → タ(単発)の順に回す。安全位置からいきなり単発に移動することはできない。セレクターの感触は電動ガンよりも軽く、各位置へのクリック感も明確。親指や人差し指でサクサク操作できる。
また、M4A1 MWS同様にハンマーダウンしていると安全位置に入らない仕様。アとタが実銃に比べてやけに太文字。
左面にはイラク派遣から支給され始めた左面セレクターが標準装備される。バネピンで留められる構造もリアルに再現。実際に自衛官が行ってる脱落防止のゴムチューブを取り付けてみたい。
固定式のストック。バットプレートはラバー素材で、89式小銃の電動ガンでは固定されていなかったが、携行時に衣服に引っかかって外れやすいということからガスガンでは固定された。
ストック左面にのみスリングスイベルがある。
この固定ストックは上から見ると右構え用に僅かに湾曲している。
ハンドガードの取り外しはまず、フロント部のロックピンを抜く。ピンはハンドガード左に留まり紛失しない設計。
ロックピンを抜いたらハンドガードを前方に引っ張れば取り外せる。
ハンドガードは実銃同様にスチールプレス製でリベット留めや溶接を使用して作りこまれていてリアル。
なお、このハンドガードを電動ガンに取り付けられるか試してみたが、アウターバレル中ほどの突起が干渉してそのままでは取り付けは出来なかった。逆に電動ガンのハンドガードはガスガンに取り付け可能だ。
実銃のガスピストン部をリアルに再現している。
アウターバレル基部の左側に可変ホップアップダイヤルがある。ダイヤルはクリック感がないタイプで、かなり固めに設定されているのでリコイルで狂ってしまうようなことはないだろう。このダイヤルは120度しか回転せず、0.25g弾が上限だと感じた。
実銃同様にテイクダウンできる。矢印の部分がテイクダウンラッチ。
テイクダウンラッチを前方へ押しながら、アッパーレシーバーを上へ持ち上げる。
リコイルガイドアッセンブルは矢印のロックピンで留まっているので、このピンを押して後ろへ引き抜く。
この際スプリングの力でリコイルガイドが飛び出すので、手でしっかり押さえながら行う。
また組立時、リコイルスプリングが奥まっていて入りにくい場合は、ボルトを少し引いてから差し込むと上手くいく。
コッキングノブを矢印の切り欠きまで引いて、取り外す。
最初はちょっと固いが引っ張れば取り外せる。
ボルトアッセンブルをレシーバーから引き出す。
矢印の部分がホールドオープンした際にボルトストップと噛み合うパーツ。スプリングが効いていてショックを吸収し、破損を防ぐ「Z-システム 89式ver.」。
ロアレシーバー側のハンマーユニットと3点バーストメカ。
3点バーストメカは取り外すことができる。マルイとしては初めてガスブローバックガンでメカニカル3バースト射撃を実現した。
取説に詳しくメカニズムの解説があるが、カウンターパーツが正確に3発を撃ち終えたら作動を停止させる。誤作動はテスト中一度もなかった。メカニカル3バーストなので、途中でトリガーから指を離せば、発射は止まり、リセットされる仕組み。
ちなみに、この3バーストユニットを取り外した状態でも撃てる。その場合、3バーストの位置ではセミオート射撃になる。
組み立てる際にテイクダウンラッチを押し込まずにレシーバーを閉じようとするとリコイルガイドの突起がストック側にあたって傷がつくので注意。
ガイズリータイプのマウントでスコープを搭載したところ、リアサイトにギリギリ干渉した。照準には問題なかったので、このまま使用したが、スコープを搭載する場合は確認が必要だ。
リアサイトベースはアッパーレシーバー裏側から4か所で固定されているので取り外せないこともない。
写真はOTSオリジナルの89式小銃用ロータイプ・ロングマウントベース。東京マルイの89式小銃ガスブロに無加工で取り付けられる。純正マウントベースより長く、わずかに背が高いのでスコープを取り付けるならこちらが良いかも。
その他、OTSからは無加工でハンドガードに取り付けられるサイドマウントベースやアンダーマウントベースも発売されているので、ウエポンライトやフォアグリップといったオプションパーツでドレスアップすることも可能だ。
ハイダーを取り外すと、バレルナットに傷がつきやすい。またバイポッド装着部のアウターバレルにも擦り傷が付くがこれらは使い込んだ証というべきか。
実射テスト
実射はいつものビレッジ2の屋外シューティングレンジ。距離は30mと40m、弾は東京マルイのベアリングバイオ0.2gと0.25g弾、ガスはHFC134aのカモガスを使用して行った。
この日は風が強く、レンジ内は風が舞っていて悪条件ではあったものの、30mではおおむねA3サイズプレートに、40mではマンターゲットに当てられるだけの性能が確認できた。
射程距離としては40mちょっとと言ったところだろう。マルイの電動ガンに比べれば集弾性は劣るものの、それでも肉薄するほどの性能だと感じた。
また0.2g弾でも浮き過ぎることなく、フラットに飛んでいく弾道で、全体的にM4A1 MWSのガスブロを撃った時よりも好印象だった。フルストロークのガスブロとしては驚異的な性能だと思う。
気温が27~28度程度あったので作動は安定、1マガジン35発のBB弾を一気にフルオートで撃ちきれる性能も見せた。ガスをフルチャージして2マグ+α程度撃てる燃費だった。
初速はホップアップを適正にセットした状態で0.2gバイオ弾で計測、10発の平均が76~77m/s程度。初弾は初速80m/s程度で、2秒おきに撃っていると徐々に初速が低下し、10発目では75m/sくらいまで低下した。念のため屋外、屋内両方で計測したが同じ結果だった。もう少し初速があっても良いかと思う。
特筆すべきはそのリコイルの質感。ボルトがガツガツと後退して激しく、そして硬質感のあるリコイルが味わえる。気になっていたZ-システムのムニュッと感はなく、ホールドオープンしたときもドカッとボルトがぶつかる衝撃を感じる。撃っていて非常に楽しいガスガンだ。
総論
東京マルイの89式小銃はガスブローバックガンならではのリアルな外観と、内部構造、実銃同様の操作性、
激しいリコイル、そして高い命中精度を兼ね備えた、これぞまさしく東京マルイが贈る純国産のエアソフトガン真骨頂といえる!!
メーカー希望小売価格64,800円に見合った、いや、余りある価値を持った、東京マルイのガスブローバックガンの傑作だと思える。実射性能だけで言えば電動ガンも良いが、分解結合や、操作手順を楽しんだりするなら、こちらのガスガンがおススメだ。
エアソフトファンのみならず、元自衛官、予備自衛官、そして現役自衛官にもぜひ手にしてもらいたい一丁!! 89式のエアソフトって自衛官の先輩の退官記念に後輩達がお金を出し合ってプレゼントすることもあるみたい。まさにこのガスガンはうってつけの品だ。恐らく今後発売されるであろう空挺用の折り曲げ銃床型にも期待したい。
今回の撮影衣装はS&GrafのJF.Ⅲ型ボディアーマーベストを使用。ワイヤーシステムも導入している。
撮影協力 ビレッジ2、S&Graf、OTS、フライングスクワッド
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